アメリカに行きます

タイトルの通りなのですが、俺はこの夏アメリカへ行くことになってしまった。アメリカっていうのはお察しの通りのあのアメリカでして、飲み屋で酔っ払った勢いで突然反米になったジジイの演説ぐらいでしか日ごろ我々の生活で話題にならないあのアメリカです。

「行く」とは申しましてもそこいらの女子大生のカナダ語学留学とは違い、マジで行く、行き倒す、いわゆる完行き、平たく言うと駐在というやつなので、つまり俺の30代 in Japanは今年で終了するのかもしれないのです。皆さんさようなら...。

行き先は寒いところだそうです。ビーチ・オン・ラジカセ with カー&セックスとは到底いかないような、とても寒く、白い粉と黒い武器が跋扈するとても危険な街だそうです。(大田胃酸と備長炭のことだといいのですが...。)

俺は高野豆腐並に周りの色とか味にスグ染まっちゃうタイプなので、このブログはある日を境にいきなりアメリカ最高情報大発信ブログになり、半年もすれば日本人の電車通勤とか飲み会とか選挙カーってうるさいよねみたいな、ジャパニーズライフスタイルを国際的な視点でdisるグローバル・アメリカかぶれ野郎になると思うのでどうか覚悟の上、これからもよろしくお願いしたいわけです。

なお、今年渡米したピースの綾部クンのことは"同期"と呼ばせて貰い、ミスター・トランプのことは"Boss"と呼びます。なお、忌まわしいあの事件を風化させないために島田紳助元司会者のことは父ちゃんと呼びます。特に綾部クンとは同じアメリカの価値観を共有するダチ公として一緒に高めあいながらも日本人のライフスタイルを上から目線でdisるアメリカかぶれ野郎として頑張っていきたいと思います。

あるときからタイトルがMy Brainになったりするかもしれません。これからもよろしくたのんます。

 

トトロが立つ

長い会議、既に気が緩みぼんやりと参加しているだけの俺の頭にふと、「トトロが立つ」というフレーズが浮かぶ。

「トトロが立つ...?」

だけどこれがまた、何かどこかで聞いたことがあるようだけども全くその意味が分からず。
トトロが立つ、トトロが立った、あれえ、これなんだっけ、ええと...などとしばらくの間会議そっちのけで何度も繰り返してみてるがなおも分からず、長い会議も終わる頃、それが「クララが立った」の間違いであると気付くまでずっと俺はひとり悩んでいた。

それを思い出すまでの間ずっと、となりのトトロのストーリーを振り返るなど、大変有意義な時間を過ごしたつもりである。

先輩から引き継いだ名刺の裏に書かれていた「ハゲ」というメモ

前職、商社務めだった頃の話だ。

よくある話だが、同じ部署の先輩が担当する取引先にいわゆるヘッドハンティングされる形で急遽会社を去ることになった。急な退職だったこともあり十分な引き継ぎもしないまま、先輩は半ば逃げるように去っていったのである。

礼儀正しく清潔な身なりで人当たりが良く、俺も色々相談に乗ってもらったり食事に誘ってもらったりと社内でも人望の厚い人だったのだが、その辞め際はこのようにドタバタとしたもので結構揉めた記憶がある。立つ鳥跡を濁さず言うが、在職中に評価が高くとも残された者の記憶に残るのは最後の姿。少し残念であった。

そんな訳で引継ぎ損ねた案件を見直してみると、話を半ばでフォローもせずに去った案件も幾つかあったし、残された者はしばらくの間その対応に追われた。

退職というもの、社会のルールでもそのときの会社の就業規則でも一ヶ月前に申告すれば良しとされているが、そうもいかないのが現実。その先輩がカバーしていた範囲、案件はそれでは足りるものではなく、もっとも、それほど仕事が出来たからこそ今回のヘッドハンティングに繋がったのだろうが、とにかく一ヶ月程度では到底足りるものではなかったのである。 

拠点としては純粋な減員であるから、残されたものに仕事が割り振られ、俺のところへも全体の2、3割が回って来た。先輩が辞めてから一ヶ月は「辞めた跡もしばらくは相談にのるから」というお言葉に甘えて、俺も何度か電話で仕事の相談をさせてもらっていたものだが、それ以降はさすがに気が引けて、渡された資料や過去の履歴などを見ながら何とか手探りで後を引き継ぐ日々。

増えた仕事に苦労しつつも半年経って何とか慣れてきた頃。前任の処理を終えてようやく本格的に、本腰入れて自分の仕事に取りかかれるぞ、と思っていたときだった。
それは上司から連絡。件の先輩の資料の中から、報告もされていない良くわからない取引先の名刺が大量に出てきたというのである。その中から俺の仕事に関係しそうな会社をピックアップしたから、ちょっと行けそうなところをあたってみてくれ、ということだった。

それは多分残された時間に鑑みて、先輩が引き継ぎをするまでもないと判断したものなのだろう。ピックアップされた割には、与えられた名刺の数は結構多かった。一枚一枚見て行くと結構大きな会社が多い。そして同じ会社で複数の名刺があり、そこそこの訪問回数で接触も多そうであった。「大手企業の中でいかに広い人脈を持つか」先輩の効果的な営業活動の一端をそこから感じることが出来た。

気付いた事があった。名刺の裏面をよく見てみると、そこにはどれにも全て何かメモ書きがしてあったのだ。メモの内容は《07.12/3 ○○打合せ》という風に、会ったときの日付や目的などが簡易的に書いてあるのが大半。その時の事を記録するのは名刺を貰ったときの基本でもある。

だが、そのとき裏面で発見したメモ書きはそれだけではないものもあった。それは会ったその人の特徴を忘れない為に書かれたのだと思われるプラスアルファのメモ書き、それを見て俺は凄く驚いた。

 

《08.×/× ○○納品  ハゲ

 

「ハゲ」と。

それに限らずまあ、見て行けばその他にも「チビ」だの「ハゲ」だの「デブ」だのといった悪口としか思えない言葉の多い事。もっと他に、何かこう、褒めてあげられるところがあるやろ・・・!と言いたくなるほど、延々続く「背が低い」「息がクサかった」「チンポみたいな髪型」といったネガティブワード・・・

「チビ」とか「眼鏡」なんて外見的な特徴で済ませて頂ければまだマシである。

中には「オタクっぽい 作業着汚い デブ」なんて、身体的特徴に加えて、主観、先入観などがさらに+アルファされて一気に畳み掛けるヴァージョンも散見され、いつしか俺は延々続くその悪口SHOWに、すっかり魅了されていた。

とある会社など例に挙げれば、同じ部署の担当者の名刺が3枚あったのだが、その3枚の名刺の人物全てに「ハゲ」と書いてあって、そのハゲ率の高さに一体そこの部署の何が彼らをハゲさせるのかと俄然この会社に興味津々となったものだ。

別の名刺に書かれていた「態度が悪い よく席外す ハゲ」に至っては、最後にとってつけられたような殴り書きの「ハゲ」がもはや《態度が悪い》事と《よく席外す》事への報復というか、ただの誹謗中傷にしか見えなかった。

きっとこの人は全くハゲてなどいないのに、態度が悪かったがために先輩の逆鱗に触れてしまったのだろう。触れてはならない闇の部分を彼が刺激し、その結果押されたのが「ハゲ」の刻印。これはきっとそうなのだ。そういう意味では、実際の容姿とは全く関係が無いのに、先輩の怒りを買った事で言われのない「負のキャッチコピー」をつけられた可哀想な人が混ざっている可能性も十分ある。

そう思うと先ほど紹介した同じ会社で担当者三人とも「ハゲ」だったところなんて、ひょっとするとただ何か先輩とトラブルがあっただけなのかもしれない。「てめえら若くしてハゲろ!」という願いだったのかもしれない!

見れば見るほど、何て魅力的な名刺達・・・、それにしても、礼儀正しく人当たりも良いあの先輩が、である。

最初は純粋に特徴を覚えておこうという動機で始めたこのメモ書きもいつしか先輩の心の奥底に潜むサムシングを刺激したのだろうか。徐々に嬉々として人の悪口を書く場と化したとしか思えないような惨状がそこにはあった。

 

「書かれていることが本当になのか確認してみよう」

 

そういう訳で、俺は趣味と実益の一致した、この気になるメモの書かれた人達へのアプローチを行った。

勿論全部に対して行った訳ではないし、実際に行けたのは、仕事として行くべきだと判断したのは全体の中の3割程度だ。あくまで実益が、仕事が優先なのでささやかな活動しか出来ないのだが、それでも趣味にならない限界ギリギリで俺は頑張ってみた。

汚名ではないかと思っていた文言の多くは、実際に会ってみると先輩のメモ書き通り、そのままの特徴を捉えていたことが分かった。

「ハゲ」はハゲていたし、「デブ」は相変わらずデブで、「チンポのような髪型」の人は、書かれていた日付から一年以上経って居たが、まだまだチンポのような髪型だった。徐々に晴れて行く疑念...。

中には「デブ」としか書かれていないのにハゲでデブだったケースもあり、「ハゲ&デブ」という「ラブ&ピース」のようなダブルキャッチコピーを避ける辺りに先輩の最後の優しさが垣間見えた。ビジネスマンではない、人間・先輩に触れた心暖まる瞬間だ。

会いたくても会えない人もいた。ただの私怨で汚名を着せられた可能性の非常に高い「態度が悪い よく席外す ハゲ」の人には残念ながら最後まで会うことが出来なかった。電話をしても書かれていた通り「席をはずしております」と言われて取り次いでくれなかったからだ。だからは俺は聞いてみたかった。「あのう、その方はハゲてますか」と。「態度はわるうございますでしょうか」と!

そのかわり、別で「ブツブツ」とだけ書かれた、恐らく若い頃のニキビで肌の荒れた人だろうとしか思っていなかった人が、実際に会ってみると「ぶつぶつ・・・」とブツブツ言う人だったことが明かになるなど、その後も想像を越えた幾つか新発見があり、その都度、先輩の底無しのセンスにはただただ驚かされるばかり。最高だった。

 

その後1年もしないうち、俺も部署を移動し、先輩が残した名刺の大半は未チェックのまま残った。大分たってしまい徐々に重要度は下がったものの、辞めた先輩の名刺は俺の後任にも一応引き継がれた。俺はその名刺を渡すとき後任にこう伝えた。

 

「『トカゲ』と書いてあるこの人にだけは会って、顔のことか飼ってるペットことか後で必ず教えてください。」

 

俺はモノの価値を全てノリ弁に換算してしまう

モノの値段、特に食べ物の値段をついノリ弁に換算してしまうクセがある。

ノリ弁は大体一個380円~450円。これ一つで男子が一日に必要な揚げ物が一発で摂取できるという満腹、満足への王道。コストパフォーマンスという言葉が出たとき、俺の頭の中にはまっさきに腕を組んで「Hi」とこちらにウインクするノリ弁の顔が思い浮かぶ。

例えば居酒屋のつまみ。それはどうやら手の込んだ創作料理らしいのだが、つまるところたった一個の豆腐に何か特殊なあんが掛かっているだけでお値段500円だったとしよう。するとすぐさま脳裏にライジングしてくるのが「ノリ弁が買えるわ・・」のノリ弁換算。そう、ノリ弁が買えるのである。

ファーストフードでも同じ。バーガー二個にドリンクやポテトで、結局何やかんやで700円以上掛かったで~というとき、ハッとして振り返るとそこには腕を組んで現れたノリ弁の姿。軽蔑のまなざしで「俺なら二個だ」と言って去ってゆく。そう、ノリ弁が買えるのである。

この前名古屋へ言った。俺の家から名古屋まで大体片道500円ぐらいである。もうここから先は皆まで言うまい。ノリ弁が買えるのである。

「ハア、つまらなかったな」と、観終わった後に悔やむ映画。そんな映画代の1800円も、気づくと「ノリ弁5個かあ・・・」と考えている自分。ノリ弁が5個も食えた別の自分!ノリ弁パラレルワールドが常に俺を苦しめる。

中村ノリという文字を見たときにノリ弁が食いたいと思う気持ち。すいません、それはただの病気です。それでも生きてさえいれば俺たちはノリ弁が買えるのである。


いっそのこと通貨の単位が1ノリ弁になればと思う日々である。

今日はこの辺でさようなら。

 

 

僕らが中指を立て始めた時期

中指を立てる、いわゆる「Fuck You」のジェスチャーとその概念を知ったのは小学3、4年生の頃、今から26~7年前のことであった。その時をはっきり覚えているのは印象的なエピソードがあるからである。

その当時いつも一緒に遊んでいた4人グループのうちの一人である小峰君という比較的おとなしい子が、ある日家の中から「おーい」と、自宅の窓の下に遊び仲間たちを呼びよせ、「なに」と近づいてきた僕らに向かって窓越しにピーンと中指を立てたのを今でも忘れない。何かしらんけどとにかくものすごく得意げであった。

全員その中指の意味が分からず外から「それなに」と小峰君に意味を聞くと待ってましたとばかりに小峰君、「『バカ』って意味さ。」と説明してくれた。なぜ小峰君に家の中からバカなどと侮辱されたのかは置いといて、実際バカだったからか「ヘエそうなんだ...」と感心してその日から遊びの中で中指を立てるのが流行ったのを覚えている。

 

このジェスチャー自体、発祥の地であるアメリカでいつうまれたのかは知らないが、少なくとも自分の周りに一気にメジャーになったと思われるのは小峰君からカマされたのほぼ同時期である。それ以前年代問わず殆ど使っている者はおらず、いたのかもしれないが気づかれないくらい一般的でなかったという印象がある。

27年前というこの時期が全国共通のものかどうかは分からないが、大体同じようなタイミングでわが国において市民権を得たように思えてならない。このあたりは自分の記憶と肌感覚を頼りに書いているものであるし地域性とか学生か社会人か、何の仕事かと言ったその人の立場によって様々であろうと思われるので、色んな人の意見を聞くなりしてきちんと調べてみなければならないと思う。

 

ただこのジェスチャーというのもの、結局はアメリカから輸入されてきた"借り物"の表現である為か、わが国では本国ほど深刻な意味に捉えられていないように思う。ブーイングもしかりだが輸入品であるためか妙にうそっぽいし、その表現が意図する事の本気度がいまいち伝わってこないのである。

中指を立てることに関しても「アメリカでそれやったら半殺しか死ぬか」などというほんとかどうか分からない物騒な話を聞いたのは高校生になってからという鈍感さであったが、こういう甘い認識は俺に限らず特に珍しいことでもないように思われる。本家じゃないという甘えもあってか、国内では割と簡単に、冗談めかして使っている人も多いように思うのである。

というのも肝心のその意味というのがいまいち日本人にはピンと来ない内容というか、そもそも取るに足らないスラングだからといってきちんと理解し、周知されてこなかったのも原因ではないかと思われ、最初に俺に中指を立てたファックユー伝道師である小峰君にしてもこれを「バカ」と表現し我々に伝えたわけであるが、これはなにも彼特有の解釈でもなく日本人にとってはその程度の理解であったというあらわれかもしれない。

というのも件の小峰君以外の子供たちにしても、何らかの悪口表現であるという認識こそあれ厳密な意味は不明で、同じように「バカ」という解釈に落ちつき、同じ時期セットで輸入されていた親指を下に向けるジェスチャーはそこでは「アホ」と解釈されたのである。僕らに「月がきれいですね」並みの解釈を期待するのは酷である。

中指を立てられたらお返しに親指を下げて応じる。バカ、アホのやり取りぐらい口で言えよという気持ちになるが舶来品を得たら自慢げに使いたくなるのが人の常であり、輸入されたものを国内で加工し、独自の文化も生み出すのもまた然り。中指を立てるのではなく、逆に中指折って残り四本を立てるというジェスチャーが発明されるに至ったのだが、その意味が「ごめん」だったのが今思い返すととてもほほえましい。