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「オナニーの売人」を夢見て

雑記

「やっぱクスリって凄く売れるんやろうな」

以前友人と飲んでいたときに、クスリについての話をしていた。クスリ、いわゆる禁止薬物のことだ。
日本でもクスリにまつわる事件がいよいよ当たり前のように報じられる時代が来て、酒の席で何となくそんな話になった・・・というワケではなく、「何か儲かる話はないものか」という実にみのりの無い話の中で出て来たのが、クスリの密売。不謹慎かもしれないが儲かる話を突き詰めていくと自ずと話は裏社会に寄り道してしまうのが常だ。

危険を冒してまで、身を削ってまで国内に持ち込む連中が後を絶たず、そしてそれを逮捕を恐れつつももの凄いリピート率で購入する色んな層の客がいる事実。売り手のリスクを考えれば、利益率なんてのも凄いのだろう。
そういうのを改めて考えてみたときに「やっぱクスリって凄く売れるんやろうな」という言葉が出て来てしまう。率直な感想だ。

勿論クスリなんて売る気もない。人類にとっての悪であると断じてしまっても良い。いうまでもない。
ならばこそ考えねばならないのが、「クスリのように売れる品物は無いのか」という現実的な策。「売れる品物はないか」という意味では、全世界の社長殿が同じように考えていることである。価格メリットがあるとか、画期的な性能が得られるとか、人の心を掴むデザインであるとか、そういうもので付加価値をつけて大量販売もしくは高い利益を得る、普通はそういう内容である。
だけども「クスリのように」となるとそうではない。その中毒性や快楽といった、人の弱みに付け込む形式で価値が高められるものが該当する。


「オナニーの中毒性はマリファナに匹敵するはず」

同じ彼と高校の時分だっただろうか、そんな話をしたことがあった。マリファナのことなんて何にも知らなかったがそんな気がした。
全てを投げ打ってまでもジャンキーがハマってしまうクスリの魅力とやらが到底想像出来ず、一体いかなるものかと、ふと我が身を顧みたところ、そこに立っていたのはいつものオナニー君だった。

 「hi」

おお、君か。ああ、そういうことか。

逆に言えばクスリに対抗できるものはもはやオナニーしか残されていない、そういうこと。
こんな事を書くと性的な快楽をビジネスにするのであれば、既に風俗という成熟産業があるではないか、そういうツッコミが聴こえて来そうだが待って欲しい。
風俗に行くという行為、いやもっと分かり易く分解すれば、セックスというものに、果たしてオナニーほどの手軽さ、常習性、バツグンの競技人口が存在するだろうか。俺はそうはおもわない。

皆様の股間に、いえ、胸に手を当てて考えてみて欲しい。

《そうだ、ヤツラは似て非なるもの、べ、別物だ・・・・!》

今この瞬間、俺のところにはこれを読んだ男子からのそんなテレパシーがビシバシ伝わって来ている。
みうらじゅんは度々、著書で「オナニーの延長上にセックスがあるという考えは誤り」と指摘している。ゲームセンターのレーシングゲームと実際の公道を運転する際の勝手の違いのような、まさに別物なのだと。これには頷かざるをえない。
オナニーを指し「練習」とか「素振り」などと表現するティーンも居るらしいが、それは若さ故の勘違い。

世界でも有数のマーケットを持つと言われる日本のオナニーシーン。具体的にこの規模がいかほどかは知らないが、ここにも既にある程度成熟した産業がある。エロ本、AV、ADVD、最近だとモバイル配信のエロ漫画やエロ動画の配信も盛んだという。紙の発明に始まった記録媒体の進化。技術が発達すれば、そこには必ずオナニーマーケットもこっそりついて来ている。

とはいえ我々が今、ビジネスとしてオナニーに携わるには限度がある。結局間接的にしかそこに介在出来ない弱さ。進化する媒体、多様化する趣味趣向に都度追いつかねばならず、「クスリのように」という前提を思い出した際、比較すればビジネスとしては二次、三次的でいつも不安定だ。

その晩真剣に語られたのは、「もし仮にオナニーの密売人になれたらものすごい大金持ちになる」という壮大なファンタジーであった。そう、オナニーに携わる諸々をビジネスにするのではなく、オナニー自体を売買するオナニー産業の頂点、オナ・VIPである。
オナニーのお手伝いをするツールを売るのではなく、行為そのものを売る売人。ジャンキーは世界中。毎日毎日俺の元には「ハァハァ・・・」と声を荒げたヤツラが押し掛けてくるだろう。年間の売り上げを考えただけでも鳥肌が立つ。(ムラついたジャンキーが毎日俺の家に来るのを考えるともっと鳥肌が立つ。)

密売が行われる船着き場では、ブツがモノホンかどうかを試すべく、まるで麻薬の売人がクスリをペロリとなめるかのごとく、軽く「シコッ」とひとコキして「・・・ニヤリ」などといういなせな場面も見られる事だろうし、場合によってはより気持ちの良いオナニーのルートを巡ってオナ戦争(通称:悲しい戦争)も起こるだろう。考えただけでも夢がMORIMORIである。

「いや、ちょっと待たれよ・・・」

我々はある事に気付いた。
大変残念なことだが、オナニーの密売で財を成した場合、例えば「麻薬王」「石油王」の ように、世間からは「センズリ王」という大変不名誉な称号が与えられ、どうやら一生それに耐えなければならないようなのだ。
これじゃあ成功者のはずなのにまるで罰ゲーム。エロ本会社の社長が世界で一番エロい、みたいな少年時代の勘違いを引用すると、「センズリ王」こそ世界で一番オナニーをしているダメなやつみたいで、最低だ。(本当はただセールスするだけなのですが・・・・)

「普通に働こう」

ファンタジーはファンタジーとして二人は酒を飲み進めたのであった。