俺の結婚式で突然ケツメイシが流れた話

数年前の俺の結婚式でケツメイシが流れたのは、友達代表が壇上で挨拶をしていたときのことだ。

≪ずっと友達、、だが時はたち・・≫

・・・ん?

≪ともにすごし・・≫

んん・・・・!おやおやおや!

友達のひとりが俺たち夫婦に向けて寄せてくれた心温まる言葉・・・・、であったが、そのとき俺は正直それどころではなかった。
ケツメイシが流れていたからだ。

いい挨拶だったのはハッキリ覚えており、友人の中でも特にしっかりモノの一人だったのでそりゃあもうバッチリ決めてくれたものだった。うわあ、良いこと言うなあと。
だが時はたち、ケツメイシが流れているのである。

「ち、チミたち、ダッ、誰の許可を得て・・・・ッ!この俺の、この俺の結婚式でッ!ケツメイシなどを・・・・!!」

身に覚えがないケツメイシ、そしてこのわざとらしいJ-POPに彩られ急に、瞬間的に出現したおあつらえ向きなイイ雰囲気ムード。
会場の誰もがそんなことには一切気づいていないのだろうが、俺だけは穏やかでなかった。

後で聞いたところによると、新郎友人の挨拶のところだけBGMの指定が無いことを当日になって会場側が気づいたのだという。
つまり耳なし芳一のストーリーと同じなのである。そこにお経の書き漏れがあったのである。
新郎友人代表の挨拶のBGMのところにはお経が書かれていなかった、つまりそういうことなのである。

「ダッ!だからって・・・・!この、この俺にひとっことの相談もせずに、よりによって勝手にケツメイシなんぞを・・・ッ!」

芳一は耳を取られただけで済んだからいい、俺はケツメイシを足されたのである。
ほかに選んだ曲とのバランスも何もあったものではない、突然のケツメイシ
「若者は全員ケツメイシが好きなはずだ!」「ケツメなら安心!」みたいな、決め付けのケツメイシ。大体勝手に決めるっていう、独断のケツメイシはどうなのだろう。怒りのケツメイシが沸いてくる。

どうせならいっそのことレベッカのフレンズとかそういうあさっての方向にコース外れをカマしてくれればもっと楽だったと思う。
だが時はたち、ケツメイシが流れているのである。

元来決め事の大嫌いな俺ですから、結婚式の決め事のアレコレに対しては妻の希望を優先し、唯一、金のタキシードを着せられそうになったときに目を開き「No!」とシャウトした他はただジッと事が決まり行くのを厳粛な面持ちで眺め続けていた俺が!唯一積極的に言葉を発し、また唯一輝いたのがほかならぬ「BGM選び」であったのだ。
俺は結婚式のBGM選びにはほかの準備と比較したときに異様なほどのバランスの悪さでもって、命を懸けていたのである。
(車の運転免許は持っていないがドライブBGM作りだけ頑張る助手席のオタクみたいなヤツである)

先日趣味が無いと言ったが、音楽は俺の趣味かもしれない。
その事実を忘れていたほど最近はもう全然取り組んでいないのだが、俺の趣味は実は「音楽鑑賞」かもしれないのである。
そんな俺が、結婚式を最高のものにしようと、唯一の趣味でもって命をかけて選んだ、そのBGMがである・・・・!

≪ずっと友だち・・≫

式場が指摘してきたあらゆるシチュエーションに合った適切かつセンスをチラ見せなどさせる小憎たらしさ、満遍なく選びつくした俺の最高のBGMの中に、ケ、ケ、ケツメイシば混入させるとはなにごとか!!!キサン!!あそこのところだけ返品させろちゃ!!!

そんな訳で俺はもう一度「新郎の友人代表の挨拶」だけをやり直したいのである。
この際だからもうBGMはレベッカのフレンズでやらせてもらっていい。よろしくお願いします。