元中日・種田の逮捕と、二の腕の根性焼き

プロ野球選手の種田が逮捕された。

 

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無免許、スピード違反だったそうだが、住所不定だったことと引退後に内装業の営業をしていたことに驚いた。結構名の知れた選手だったはずだが、それでも引退後の人生の方が長く、多くの選手が引退後に野球に関われる訳ではないという厳しさを改めて実感した。

種田逮捕とプロ野球選手の引退後の人生云々は置いといて、俺はこの種田という選手には色々と思い入れがあり少し昔のことを思い出していた。


種田の登場はセンセーショナルだった。今では知る人も少なかろうが、打撃フォームが独特で、はっきり言ってカメムシであった。打席に限らず、ヒットを打って一塁へ走るその姿は追いもしないのに勝手に逃げるカメムシの様で、顔も若干昆虫系だったし、彼には悪いがともかく種田にはカメムシっぽい印象しか持っていない。

ただし、種田は打撃フォームが物珍しいだけの選手ではなかった。横浜時代は代打としてワンポイントで起用される事が多かったが、その勝負強さから「代打の種田」として名実ともにそれなりに知られた選手だった様に思う。横浜に移籍したのも実力を買われてのこと、スターティングメンバーにも名を連ねていた様に記憶している。

今思うと種田という名前も良かった。それまで種田と言えば山頭火だったが、あの時代は「代打の種田」だった。そもそも小柄で種っぽい感じがハマっていたのと、あとは「代打の種田」という妙にリズムの良い響きも良かった。「代打の種田」略して「種打」、それで良いじゃないかと、それで意味が通じるジャンという、そんな気持ちにさせられる収まりのよさ。

ちなみに種田が塁に出る事を「発芽」と呼んでいた。「出塁する種田」略して「発芽」、それで良いんじゃないか、それで意味が通じるジャンという、そんな気持ちにさせられる種田の貴重な出塁シーン。


このように愛されていた野球選手、種田。だからこそ今回の逮捕は悲しい。

種田を知っている人間であれば、一度くらいはあのバッティングフォームを真似したはずだ。体育のソフトボールや地域の野球大会、あの当時何人の人間が種田の真似をしただろうか。

俺もその一人だ。そのとき種田が現役だったかどうか記憶にないが、当時大学生だった俺はある晩、どういうつもりか酔っ払ってタバコを口に咥えたまま、無性に種田のバッティングフォームを真似したくなってしまった。

これはもう「そういうものだ」としか説明出来ないのだが、タバコを咥えたまま種田のバッティングフォームを真似すると、何ぴとであろうと丁度二の腕にタバコの先端が当たる仕組みになっていて、酔っ払っていた事もあってか熱さに鈍感なまま2、3秒間タバコを二の腕に押し付け続けた結果、そこには見事な根性焼きが完成していた。

ドライアイスで除去した左手のイボの痕を「これは根性焼きだ」と中学3年間嘘をついた事はあったが、マジの根性焼きはまさかの種田のバッティングフォームで出来てしまった。火傷が辛くて、ヤンキーの凄さを大学2年でようやく知った。

 

だから今回、俺が種田逮捕のニュースを聞いたときは真っ先にこの二の腕の根性焼きの事を思い出した。久しぶりにまじまじと見る自分の二の腕。だらしない二の腕であったが、そこには薄くなったものの、あの時ついた根性焼きはまだ微かに残っていた。