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最終出社日にカマしてくれた野崎さん

前職での話である。同じ支店にいた野崎さんがとうとう退職を決めたときのことだ。

当時俺より4つ上の32歳。同じ九州出身だった野崎さんは、凄く真面目なのだが、頭が硬く、それが悪いほうに作用してしまったのかはっきりいうと仕事があまり出来ない人だと思われた。年下とはいえ先輩の俺に対してはプライドもあったのか一度も相談されることなく、むしろ何か張り合っているようにすら見えたほどだ。

一方ではかばかしくない営業成績には、ミーティングのたびに上司から何かとガミガミ言われ、それがモチベーションの低下を引き起こすと、さらに仕事に悪影響を及ぼす・・・・、という悪循環。

モチーベーションの低下が顕著になってから3ヵ月ほど経った頃、遅刻や早退などの明らかな勤務態度の悪化なども見られ、半ば「まあ、しょうがないか」というような社内の雰囲気の中、形ばかりの引きとめすらロクにないまま、野崎さんはすんなり辞職届けを出すにいたった。

二人の子を持つ父親であるが、よほど嫌だったのか次の仕事は決めないままの決断だったという。今二児の父の立場になってみると相当な決断だったであろうし、彼自身もそうだが、周囲はもう少し何とかしてあげられなかったのかと思うところはある。

ともあれ一般的に退職する人の多くは、後任への引継ぎを終えた後、残っている有給休暇を消費すべく在職残り2週間程度を全て休みにするのが常であろう。

野崎さんもそのような形で残りの在職期間を有給休暇の消化に充て、自ら総務に告げたらしく残り一日で本社、支店とそれぞれ挨拶に来るハズだった。ところがである。最終日、最後の挨拶をしに来ると思い、待っていた支店の我々に届けられたのは衝撃の連絡・・・。


朝、最後の出社をしてくる予定の野崎さんを待っていた我々に対し、支店長が酷く困惑した顔でこう伝えた。

「えー・・、野崎君から本社のほうに連絡がー、ありまして、『今日は体調が悪いから休む』そうです。」


ザワザワザワ・・・


今日は・・休む。

 

もう次はない、最後の出社日に「今日は休む」というこの、人生に一度出来るかどうかの体を張ったサラリーマン・ジョークはどうだ。野崎あの野郎、ラスト・ダンスで凄いステップをカマしてくれたぜ・・・!

 

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※野崎

 

≪次いつ来るんだ・・・来世か・・!?≫というオフィス内のざわめきの中、俺は野崎さんが何か物凄い火器を持って「最終出射じゃああーーー!」など言いながら我々に乱射を試みるシーンを想像しドキドキしていたが、幸いそういう事もなく、それ以来彼とは一度も会わずに今に至る次第である。

俺もそれから1年後に現在の会社への転職を果たしたわけだが、彼が幸せな人生を送っている事を願うばかりである。南無。