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バスケットボールにおける「オフェンスチャージング」という奇習について

中高と部活はバスケットボール部であった俺だが、Bリーグが開幕しBSなどで観る機会もあることから久しぶりに観るスポーツとしてのバスケットボールに向き合う日々である。現役の頃からルールも変わり随分と様変わりし若干戸惑う部分もあれど時々観る分には良いものである。

 

ところでバスケットボールというスポーツ、接触の多い激しいスポーツの様なイメージが強いかもしれないが、実際にはディフェンス(守り)側の体の接触は大概の場合ファールを取られることが多く、基本的に接触は禁止されているスポーツだ。

長年のルール改正の中で大分接触には甘くなってきたと言われるが、サッカー観戦にすっかり慣れた身からするとバスケットの笛の吹かれる頻度は甚だしく、外部の人からは頻繁にプレイの止まる随分とファールの多いスポーツだと思われていたことだろう。

 

相手を叩いてはダメ、掴んではダメ、押してはダメ等など、あれだけ早いパス回しとドリブルを相手に、これだけ接触を制約されてはディフェンス側がボール奪えるわけねーだろと思えてくるのだが、あながち間違いでもなく「基本通りにやれば」必ず数的有利を作り出せて、オフェンス(攻め)側が勝つようになっているのがバスケットなのである。(俺はそう思う)

だからこそオフェンス側の有利な部分を制限するために、24秒以内にシュートを打てとかドリブルを止めたら5秒以内にパスしろとかゴールの下には3秒以上居てはダメ、などの時間的制約でバランスを取っているのだが、相変わらず有利なのは21世紀の現在でもまだオフェンス側である。

 

発生するファールの大半はディフェンス側という、守る側が圧倒的に不利なスポーツであるが、そんなやられっぱなしの哀れなディフェンスが唯一逆襲出来る機会もある。それが今日の主役「チャージング」というファールである。正式に言うと「オフェンスチャージング」と呼び、ディフェンス不利なこのスポーツにおいて、オフェンス側が取られる貴重なファールだ。

ただし、このチャージングが成り立つにはちょっとした工夫が必要であり、ディフェンス側がただジッと黙って待っていても成立しづらい側面がある厄介なファールでもある。

どういうことかというと、ディフェンス側は守りであるのみも関わらず受身ではなく能動的に、積極的に狙っていかねばなかなか起こらないバスケットの中でも高難易度なプレイなのである。『狙っていく』というのがどう意味かというと、成立の条件の1つにディフェンス側の「私何もしてないのにオフェンスの人に押されましたぁぁ!!!!」というアピールが挙げられる。それが全てではないが重要な要素である。

そしてそのアピールとして出されるのが「ウワァァァァァァ!」や「イタァァァァイ...!」などといった思い思いの叫び声。わかりやすさを追求した結果なのだろうが、大体こんな感じであった。

それはまるで心技体を重視する剣道で「一本」が成立するのにその時の「声」が重要なファクターであるように、いつしかディフェンス側のチャージング狙いの「うわあああ!」といったオーバーアクションが必須というか、それをどれほど大げさにアピールするか、といった奇習がバスケット界に蔓延するようにもなっていたのである。

従ってこの「チャージング」は難易度、レアさ、またその叫び声などをトータルするとトリッキーなプレイや3ポイントシュートと並んで、バスケット玄人が「おおお」と喜ぶ名物プレイの1つでもあった。

 

して、この「オフェンスチャージング」について懇切丁寧に説明したのでここから俺の話をさせてもらうが、俺も実はこのチャージングの魔力にとり憑かれし、ディフェンスの奴隷。

試合中、華麗にチャージングを奪ったアノとき――ドッと沸いた味方ベンチと会場のどよめきが忘れられず、日夜ディフェンスのみを鍛錬し続けて3年間、とうとう全員守備・全員攻撃のバスケには存在しない「ディフェンダー」という役職を持つまでになった頃・・・≪攻めたかった≫と悟りながら引退したアツいあの夏・・・・

脱線しかけたので話を戻すが、つまり何が言いたいかというと、俺もオフェンスチャージングを狙って、試合に出ればしょっちゅう奇声を発していたということである。

俺が多用していたのは「オウオーー!!」という声にもならない、のどの奥でこもったような叫び声。オウオーー!である。
俺の高校があった地区ではなぜかこの声が流行しており、「オウオーー!」って言いながら倒れる先輩を見ながら「うわあセンパイかっこいいな...」と、俺もそれに倣った格好であった。

しかし俺の人生、試合中にオウオが成功したのはただの1度だけ。あの時は素晴らしかったナア・・・盛り上がったなあ↑

まあ後は悲惨なもので、深刻なオウオ中毒。一度クセになったオウオがなかなかやめられず、大して激しく当たってないのにオウオーー!って言って審判に「君、みだりに声を出さないように」と叱られて「オウ...」と返事したり、同じ試合で相手の体に一切当たってないのに癖でオウオ!って言ってしまい、「しまった殺される」と思ってそのままネンザしたことにして倒れたこともあったし、晩年は体が当たりそうになったら勝手に「オウオーーー!」と声が出るシステムになり、一番酷いときにはマークしている相手に、ドリブルで体の真横を華麗に抜かれたとき、つい「オーウ!」って言ってしまい監督にお前ふざけてんのかと言われて交代させられたことである。

あの時は味方ベンチも会場も妙に盛り上がっていて、ああバスケって良いなって思った次第である。