君は「ぎょう虫チョコレート」を知っているか

突然だが、皆さんはぎょう虫検査をご存知だろうか。

ぎょう虫とはケツに住みつく小さい虫らしいのだが俺もその姿を見たことはない。詳しくはインターネットで調べてもらいたいが、その有無を調べる検査方法というのが非常に独特で、魚群探知機もしくは戦闘機のレーダーを思わせるような円が幾重にも重なったような実に物々しいデザインの青いセロハン、通称「ぎょう虫シート」をロック・オンとばかりに四つん這いの肛門めがけてペタリとやるのである。

毎年検査が義務付けられていた小学校を卒業して以降めっきりやらなくなったなぁと思っていたところ、なんともう最近では義務ではなくなったというではないか。ならばこそあの忌まわしい奇習の記憶を後世に残したく今回は自らの恥ずかしい体験をここに記す次第である。

 

もはや昔の話と割り切って話すこととするが、実を言うとこの俺、ぎょう虫検査で二度もぎょう虫をキャッチしてしまったという、漁師サンもうらやむほどの超高感度な男。ぎょう虫たちの間ではきっとヘーベルハウスなどと呼ばれていたに違いない。

そんなぎょう虫ジョークはさておき、皆さんはぎょう虫検査が行われた後、秘密裏に保健室に呼ばれる数名の生徒たちの存在に気づいていただろうか。まるで声を掛けられることを恐れるようにコソコソと教室を出てゆく彼らこそ「宿主」と呼ばれるぎょう虫ホルダーである。

彼らは表向きは「特別ぎょう事」という学校側からのカモフラージュの下、しかし他生徒にはバレバレのまま保健室へ集められる。俺が覚えている光景としては、学年関係なく全校から集められた10名程度が伏し目がちに並び、最初にもらった青いセロハンとは異なる、宿主限定の「赤いセロハン」を渡されるのである。青から赤へ、それはまるで「てめえらのケツは赤信号だ」と言っているかのよう。ぎょう虫は待ったなし、そこに黄色信号は存在しないのである。

赤紙による召集を終えるとここから先は学校は関与しない。戦ってきなさいと見送られたあとはもう自力で病院へ行き、クスリをもらうことでしかぎょう虫の駆除法は無いのだから。

更にディープな世界はここから。尻に虫を宿したことのある者しか尻えない丸秘情報が飛び出すのでメモの用意をされたし。ぎょう虫は一週間か二週間ほど薬を服用することでしか退散しないしつこい連中。そしてここで服用する薬というのが今回の目玉。通称「ぎょう虫チョコレート」と呼ばれる一風変った薬だ。深い茶色、板チョコレートのようにブロック状になったものをまさに板チョコのように一つ一つ割って食べる。

気になるそのお味だが、苦いのに味が薄い、一粒で二回損する不思議な味だった。糖分もカカオも微塵も入っていなかったのだろうが、当時の俺には不覚にもそれが美味しく感じられたのは、情けないことにあの当時あまり頻繁にチョコレートなど買ってもらったことがなく、それでも十分なお菓子となったから...。

「うめェ...まだ治りたくないぜ」

いやあ、ぎょう虫だけになんとも虫のいい話ですね(笑)

もし仮にこのブログを読まれている女性の中でまことに不運にも「宿しちゃった」なんていう方はいないだろうか。ノープロブレム!ご安心ください、クリスマスの後はもうすぐバレンタインデーである。もし「尻の虫より、恋の病の治療が先!」なんて方がいらしたら大至急病院へ行って処方されたぎょう虫チョコレートを意中の男性にプレゼントしてみることをオススメしたい。ライバルに差をつけるその不思議な味に、噂の彼もドッキンコ間違いなし!

「うッ!君これ苦いね・・!」
「非売品よ!」

なんてやり取りから恋愛に発展なんてことも。

 

ここまで汚い話で恐縮する一方、一応言っておくがぎょう虫の侵入経路は多種多様、決して俺のケツが不衛生だったわけではないことだけは言わせてください。しかし思い返せば4歳のとき頭にシラミが発生してスキンヘッドになったことがあるので多分それなりに不潔だったと思います。

ともかく、健全な少年少女時代を過ごされた立派なご家庭の出の皆さんがドン引きしていないことだけを祈ってこの話を終了したい。