俺は1年365日、とにかく手汗が凄い

昔から手汗が凄い。もの凄い。ちょっと拳を握っているだけで、その手を開けば必ずジュンッ...!

例えば机の上に何となく手をおいておくだけで、ものの数秒で振れていた部分は湿るわけである。窓ガラスに手をかざせばそこは瞬時に結露である。どんな季節であってもだ。忘れもしない中学のフォークダンス。俺と手をつないだ女子は全員濡れていた。あ、手がですね。

触るもの全て濡らし尽くす俺の魔法の手。それを観て「ディズニーシー」と呼ぶ人もいるとかいないとか、確か一人もいないし行ったこともないです。しかし、あれは中学のときだったか、ほとばしる俺の手汗をみた国語の吉森先生って人が「お前こそ乾きの土地の救世主だ!」と言ったのも当然嘘です。吉森もいない。

握手をしたら大体の相手が「うわっ」という顔をするのを長年見て来た俺が今思うのは、とにかく手が湿っているととても恥ずかしいということ。それに尽きる。

「エッ、濡れてる!」

ジトッとしている俺の手を≪おてての方は正直だな≫とばかりに驚く様を幾度と無く見て来た。やっぱり湿っているってのは何か汚い感じするし気持ちは分かる。なので俺だって気を遣って握手する前にきちんと手を拭いているのだけども、それがまあ相手と握手した瞬間、ジワジワジワッと、ランドからシーに早変わり。シーというのは先ほど言ったディズニーシーのことね。

そんな俺を唯一慰めるのがかつて兄に言われた「手汗が凄いヤツは太古の昔、猟りの名人だった凄いヤツだ!」という説である。一体どういうことか。つまり手汗が凄いヤツというのは、獲物を見つけた際にとっさに手に持った武器がすべらないように、何かを掴むと汗が自然にジワッと出るようになっている生粋のハンターである!という説である。握手する相手すら武器とみなすパワフルさも含めて、全国の手汗人を勇気づける力強い説だ。

で、ついこの前の話だが、車に乗っていて手汗でハンドルすべってあわや事故起こす所だった。何もいいことねえじゃねえか。