アメリカで運転免許を取得した時の話

日本の運転免許があれば、あとは国際運転許可証を持参しさせすれば基本的には海外でも運転が出来る。しかしこれにも1年という期限があり、更新しさえすれば引き続き運転し続けることは出来るものの、短期滞在でもない限りは大抵のアメリカ駐在員は現地の運転免許を取得するはずである。

アメリカの運転免許の取得方法は州によってルールが異なる。日本の免許があれば簡単な手続きだけでアメリカの運転免許が交付される州もあるときくが、基本的には学科試験、実技試験が必要な州が多いようだ。ただ自動車学校で指定の学科、実技の単位を取るとか、路上講習何時間といった細かい制約はなく、自信がない人は私設のドライビングスクールへ行き、あとは親に教えてもらったりして各自好きなやり方で運転方法を覚えていくようである。

母国免許をすでに持つもの社会保障番号と自宅の住所を証明する自分宛のはがき、封筒等2枚を持参出来る状況になった時点で町中のちょっとした商業施設の一角などにある、運転免許証やナンバープレートなど自動車に関わる全般を取り扱う公的機関で簡単に学科試験を受けることが出来る。カウンターに並び、自分の順番が呼ばれると試験開始。言語を選ぶことが出来、日本語で受けることも可能である。

タッチパネル式の問題を答えていくとこの日本語訳のヤバさに段々気づいていくのだが、例えば「車間距離が小さいと車の前方と後方どちらがぶつかるか」という問題については「俺が後続車なのか、前を走るのか教えてくれ」と言った具合に車の問題というより途中から完全に日本語の意味を理解する読解力の問題になってくる。中には「そrは」などという変換ミスもそのまま残っているという事実から、そのヤバさをわかって頂けるだろうか。

晴れて筆記試験に合格すると次は路上試験である。路上試験を行うことの出来るドライビングスクールの名簿を渡され、好きなところへ電話して試験を受けろというのである。試験はその辺の教会の駐車場で実施され、一端停止、バック駐車、縦列駐車を行ったあとはハイウェイ走行を含む路上試験の始まり、という流れ。

俺が選んだのは幸運にもこの界隈で最も甘いとされるスクールで、結論としては難なく一発合格となったのだが、人によってはこの教会ステージで「一端停止が甘い」「車の整備不良」などという曖昧な理由で不合格とされ、試験料金没収の上不合格とされる人もおり、従いこのスクール選びで試験の合否の大半ほぼ決まると言っても過言ではないのである。

この路上試験を受けたのが渡米して2ヶ月の頃だっただろうか。英語も拙い中で知らないアメリカ人と30分のドライブ。それだけでも結構緊張するというのに、その直前になってこの路上試験中に助手席の教官から英語で必ず1つ質問を受け、それが路上試験の採点項目になるという情報を知ってしまうとさらに心中穏やかではなくなってしまった。

会社の先輩駐在員に話を聞いても、皆同じく渡米してすぐの頃に試験を受けているためこの質問の内容を上手く聞き取れずその内容がハッキリしない。

「なんか運転中にワーーっとまくし立てられ、分からなかったので何度も聞き直したら『もういい!』と怒られた」

アメリカ人にマンツーマンでまくし立てられ、挙句呆れられる。恐怖である。

この様な話を聞くと、一つのことが解決しないままに話が進むとそれをずっと引きずってしまい次のことが全く頭に入ってこない、気持ちの切り替えが下手な俺のようなタイプなどはそれがその後の運転に支障を来たしそうで甚だ心配である。

それからというもの、インターネットで駐在妻のブログを読み漁り、果たして一体路上試験中にどんな質問がされているのか特定しようと躍起になったものであるが、駐在妻の中で日本の皆様に向けてマイ・アメリカン・ライフ・ブログを書く連中ときたらば教官の英語のひとつも聞き取れないコばっかりでまあ本当にミニマムで曖昧な情報しか出てこないのである。

しかし俺の冴え渡るインターネット・リサーチ能力がその様な断片的な情報の中から一つの有益な情報を見つけ出すまでに1日と要らず、結果としてある一つの事実にたどり着いたのである。

「何か聞かれたらとりあえず『ショルダー』と言えばいいらしい」

これは『アメリカ 路上試験 質問 回答』という冴え渡るインターネット・キーワードで出てきたあるアメリカ駐在妻の方のブログに書いてあった一文なのだが、結論としてはこれを完全に鵜呑みにしました。だってこれが一番簡単だったから...。

「ショルショルショルショル...」

路上試験が始まるとショルダーを忘れぬよう念仏のようにショルダーを唱えたものである。

そして路上に出て数分後、助手席の教官から早速質問が飛んでくる。

「Could you please afaojfoj○×▲.....」

「ショルダー?」

「Sorry?」

「ショルダー?」

早速ショルダーの出番である。こんなに早く来るとは思わなかった。全く油断もすきもあったものではない。ショルダー砲は命中、見事撃墜である。

しかし俺のこん身のショルダーアタックにも関わらず敵は死ぬ気配がないばかりかまだ何か言ってくるわけである。

「No, Please turn on ○×▲...」

「Sorry?」

「Radio! Turn on!」

Radioぐらい分かると俺の中のキタノが叫ぶ。言われるがままにラジオをオンするが、いやいや俺のショルダーはどうだったんですか。(後に分かったことだが運転中にラジオの音量などの操作が出来るかどうかを見るのも試験の一つなのだそうだ。)

その後何度か質問とも言えない世間話のような問いかけがあるたび、俺はその内容が理解できずとりあえず「ショルダー?」と一応言ってニコニコすることとした。その甲斐もあってか、俺は路上試験一発合格、こうして質問に対して「ショルダー」と答える説は正しいのだと証明された。

駐在妻のブロガーの皆さん、どうもありがとうございました。