俺の出張

週の半分は出張で、大半はアメリカのド田舎方面へ車で片道4、5時間かけて移動し翌日帰るか、または数時間の移動を繰り返しながら戻っていくパターンが多い。

全米を数人でカバーしておりそれだけを聞けば大変だが、実際にはアメリカの製造業、特に自動車が東側に偏っているので行き先は凡そ偏っている。

大半の出張先は住んでいるデトロイトから車で6時間以内で移動できるケースが多く、飛行機移動と迷うが結局車移動を選んでしまう。飛行機出張のほうが楽だが申請が必要というのと、時間を気にしながらの移動、時に空港界隈の渋滞にハマって冷や汗をかかされた経験などから6時間以内であれば車で移動することにしている。

車の運転は嫌いではなく、アメリカの道路、特にハイウェイは運転するのに気持ちがよい。速度は大体120~130km/h、ずっと真っ直ぐで渋滞もなく、音楽を聴きながら本当にボケーッとしていられるからである。

 

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俺の行き先は大抵そんな自動車専用のハイウェイを降りて更に1、2時間ほど田舎道を走らねばならないド田舎で、片側一車線になり回りには畑しかなくなり、ガソリンの心配をしたり空腹に悩まされたりすることも多々あり、

 

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時々このような集落が現れたときにガソリンや水などを購入し、

 

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また何もない田舎道をひた走る。

前を走る車が1時間前からずっと同じだなとか、広大なトウモロコシや麦畑、道路沿いにある廃墟や道端で「Sale」と売りに出されている年季の入った天然のクラシックカーなどを眺めながら、時々右折したときにナビの発する「この先270km、みちなり」にこれぞアメリカや!と興奮してしまう。

 

 

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人が集まったから教会が出来たのかはたまた教会が出来た場所に人が集まってきたのか、アメリカの田舎の集落の発達には詳しくないが大体農地の広がるエリアに時々現れる集落には大体大きな教会がありそこを中心に街が出来ているように見える。

こういう場所には地元の強固なコミュニティがあるように感じられ、フラッと降りて地元の商店で買い物をするのは少々緊張する。

 

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そんな集落よりは低い発生頻度で、時々通過するそれなりに発達したダウンタウンを有する街。

ホテル、飲食店、スーパーマーケットに至るまで、アメリカでは全国チェーン化しないと生き残れないようになってしまった今、アメリカの地方はどこも全く同じ景色となってしまった。日本の郊外が向かっている先もこれに近いかもしれない。

そんな中にあってもダウンタウンには今でもその街に昔からある個人商店が残っていて、街の特性や個性がある。

 

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目的地を急ぐ身としてはそそられる街にも降りることはなくひたすら目的を目指し田舎の暗い道をひた走る。

アメリカの物流の大半が大型トラックなのだというが、一方でドライバーのなり手が不足しているのだという。今はとりあえず移民系のドライバーが多いようだが、将来自動運転が実用化されたら真っ先にここが自動化になっていくのではないかと思う。

 

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アメリカの道にはあまり街灯がない。道路も管理が常に行き届いているわけではないので穴も多く水溜りも出来やすい。

昔夜中走っていた山道でワイパーの能力を超えた大嵐に遭い視界ゼロの中前を走る大型トラックの光だけを頼りに死に物狂いで何とか命拾いをしたことがあるが、小学生のころに焼肉を喉に詰まらせたとき以来の「俺は死ぬのではないか」と本当に思った体験である。

事故にあっても助けが来ない場合があるので特に冬場、夜は運転しないほうがいいのだと思う。(今度書くかもしれないが先日ついに雪道でスリップしてレッカー沙汰になってしまった)

 

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ホテル選びも重要である。安いホテルは危険で、一度モーテルのようなところに止むを得ず宿泊したら客層が悪く、治安の面で大きな不安を抱いたので以後はなるべく予算内で一番高いところを選ぶようにしている。

たとえ同じホテルチェーンであっても田舎にあるホテルは昔あった地元のホテルを買い取って改装したものが多く見た目や設備、クオリティも統一されておらず、泊まった先でピンキリな場合が多い。

 

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いろいろあるが、一つ言えるのは、アメリカのビジネスホテルの朝食のクオリティは大体同じでほとんど期待できないということである。卵、肉、パン。どこへ行ってもこの組み合わせ、味が全国どこへ行っても同じであることから妙な安心感。

 

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翌朝、ナショジオでよく行くような僻地になるとメシを食べるのも大変なので時にホテルの朝食から卵、肉、パンを持ち出しそれを昼飯にすることも多々。冷えると更に味が落ちるのだが、まだ落ちしろがあったのかと感動するほどである。 

 

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対向車もいない何もない道を走る。独り言が増え、歌を歌うようになる。俺はここにいるぞとオナラをする。インターネットで日本のニュースを見る。昔のことを思い出したりしてアーアアーとなる。

 

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世界の裏側にいても日本のツイッターで発生したどうでもいい揉め事が気になってしまう。俺はここにいるぞとオナラをする。

 

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また5時間かけて帰るとき、俺は時々Google Mapを見てゾッとする。現在地も目的地もアメリカ。アメリカ?知らない県!

帰る先が地球の裏側の縁もゆかりもないところなのにそれでも家に帰ると安心する。住めば都、属するコミュニティがあるところが人の居場所なんすね。俺は仕事をがんばります。