ゲームがしたくてたまらなかった

子供のころ親にゲーム類の一切を禁じられていたため、ゲームを持っている友達の家に行っては友達に頼み込んで少しだけゲームをやらせてもらう卑しいタカリ行為をしてゲームをさせてもらっていた。とにかくゲームがしたくてたまらなかった。

俺は元祖ファミコンの世代。テレビゲームは世に出たばかりでゲームを持たない子供の方がまだ多く、ゲームを持つ少年は近所のヒーローのような扱い。彼らのお宅にはゲームをしたくてたまらないキッズが大挙し後ろで正座をし待っていたようなそんな状況も今では懐かしい。

時が経つにつれゲームを持つ子供は増えていったが俺は相変わらずゲームを買ってもらえなかった。父親は何かにつけて厳しくゲームに炭酸飲料、ファーストフードなどが禁止されていた。楽しいことは悪である!快楽は人をだめにするのだ!誇張されたメッセージを勝手に感じた。父親はなぜか明石家さんまが嫌いでさんまがテレビに出ると悪態をついてチャンネルを変えた。ゲームなど買ってもらうのは絶望的であった。

近所にはシンちゃんとカズくんという親からゲームを買ってもらえた幸せな友達がいて、シンちゃんは帰ってきてから30分間のゲーム時間があって、カズくんは週末だけゲームができる。俺はそれに合わせ「あーそーぼー」と呼び鈴を鳴らした。

「カズくん、そろそろやらせてあげなさい」

カズくんのおかあさんに同情されていやいやコントローラーを渡されると夢中でゲームをした。死んだら交代と言われた俺はすぐ死ぬのだがその間の僅か2、3分でもゲームは楽しかった。またコントローラーをカズくんに返し、代わってくれるのをまった。カズくんのお父さんはサンタクロースを信じている俺を面白がって、俺が来るたびにサンタクロースはいないよ、サンタクロースはお父さんだよとバカにしていたが俺はゲームしたかったので全く気にならなかった。俺の信じるサンタクロースには「どうかゲームをください」とお願いしたがそれは何年経っても叶わなかった。

友達の友達みたいな、一度たまたま遊んだグループの中にいただけの面識もほとんどない苗字もよくしらない人がゲームを持っていると知れば、ゲームしたさに突然彼の家に遊びに行き戸惑う彼にも目もくれず代わってもらえるはずもない彼のゲーム中の後ろで黙って眺めていた。結局一秒たりともゲームさせてもらえないどころか、彼と彼の母親に殆ど無視されていた中で、彼のゲームが終了するや「じゃ帰るね」と返事もない玄関の靴を履いてトボトボと歩いて家に帰った。

ゲームがしたくてたまらなかった。お前らのことなど関係ない。俺は死ぬほどゲームがしたかった。