それは理科で地殻の授業中のことだ。
「じゃあ前回の授業のおさらいをします」と理科のクリヤマ先生。冗談が好きだがキレると平手打ちをしてくる、今でいうといわゆる暴力教師なのだが、巨大隕石が落ちて突然大量絶滅するまで、この地球上にはそんな暴力教師で溢れていた事は忘れないでほしい。
そんなクリヤマ先生から「じゃあー、この前の復習問題。答えて。」と、当てられたのは石田君。さすがに前回のおさらいであればと言う思いもあったのか、クリヤマ先生はあまり成績の良くない石田君を指名した。
問題は基本的な内容だった。
「地面が盛り上がることをなんといいましたか?」
石田君、ちょっと考えながらも「隆起(りゅうき)です!」と答えた。「正解!」と言う先生のクイズ番組然としたリアクションと、石田君のうれしそうな表情に、教室では軽く笑いが起こる。
しかし安どの表情で座ろうとした石田君に「まてまてまてまて!まだ終わってない」と、なおもクリヤマ先生の復習問題が襲い掛かる。
「では逆にー、逆にだぞ、地面がー、低くなることをなんといいましたか?もう一回、石田ッ!」
これも正直基本的な内容である。隆起がわかればワンセットで覚えるべき用語。沈降(ちんこう)である。しかし石田君「ええと・・・」と先ほどの正解直後とはうって変わって表情は曇り、うつむいてしまった。彼は明らかに思い出せずにいたのである。
そこでクリヤマ先生、どうもこのまま彼に答えを言わせたいらしく、ちょっとしたヒントを出した。
「男にしかないものといえばなんだ石田!」
再び教室に笑いが起こる。これはご存知「沈降(ちんこう)」と「チンコ」を掛けたセクシャル・ユーモア。クリヤマ先生、今の基準でいうと完全にセクハラ教師なのだが、巨大隕石が落ちて突然大量絶滅するまで、この地球上にはそんなセクハラ教師で溢れていた事はどうか忘れないでほしい。
クリヤマ先生渾身のセクシャル・ユーモア。しかし石田君にはそれが伝わらなかった。なぜだ石田!チンコだろ!という心の中の突っ込みもむなしく、ひょっとしたら石田君の頭の中には沈降という用語は既になかったのかも知れない。
クリヤマ先生の沈降とチンコで踏んだフリースタイルラップに反応したオーディエンスは既にクスクス笑っていたが、石田君だけ一人、起立したまま苦悶の表情を浮かべている。
それを見たクリヤマ先生、短気なクリヤマときたら!答えを導き出させようとさらに石田君を煽り、あるいは最悪「チンコ」と答えても音の響きで強引に正解にしようと思ったのか、「おい!石田よう、男にしかないものってなんだよォ!ウォウ!」と語気を強めて詰め寄った。
「男にしかなものは何だオラァ!」と生徒に詰め寄る教師。今のご時勢、かなりヤバいシーン。俺なら泣きながら「甲子園です!」と叫んだかもしれない。
だが石田君はどうだったか。その直後に彼が発した言葉は僕らの想像の斜め上を行くものだった。彼がその答えにたどり着くまで、ヒントにしたのは先ほど彼が見事正解した「隆起」であることは明らかで、「隆起・・・」「男だけのもの・・・」「りゅうき・・・」「男といえば・・・」「・・・き」という風に頭を働かせていたのは想像に難くない。
「あ、分かった!」
しばしの沈黙の後、前置きもなく突然石田君は吠えた。
それを聞いたクリヤマ先生、貴様ァ、俺の渾身のセクシャルヒントを無駄にするところだったなヨッシャー言うてみよ!とばかりに目を開き「おっ、よーし!じゃあ答えをいってみろ石田ァ!」
「勃起!」