ある戦争体験者の話

佐賀県育ちの俺はというと、小学生の頃の修学旅行といえば決まって長崎であった。
同じ隣県の福岡よりも異国情緒溢れ、手っ取り早く観光地を味わえるのも理由かと想像するが、選ばれるもう一つの理由は長崎が原爆が落とされた都市であることで、平和教育もその中に盛り込まれるからだ。

グラバー邸や稲佐山オランダ坂など、観光地はきっちり押さえつつも平和教育は最優先。色んな名所を回りつつも、記念撮影はすべからく平和祈念像の前であった。

平和祈念講演会なるものが初日に行われ、長崎に到着したらなによりもまず戦争体験者の話を聞くことになっていた。

忘れもしないあのときの平和講演会。話し手は地元のおばあさんだった。深々とお辞儀をし神妙な表情で語り始められた戦争体験談は前半・後半の二部に分けられたのだが、内容のうち、前半は完全に「自分が若いときにいかに美人で評判だったか」というものだった。

教師、生徒、みんな神妙な面持ちでそれを聞いていた。