アメリカ人はいつもエキサイトしている

アメリカ人の挨拶でよく使われるのが「I am so excited」という表現である。エキサイトとはいうがここでの意味はワクワクしてるとか、楽しみにしている程度でほぼお決まりのフレーズといってもよい。

例えば新しく職場に入ったスタッフが「皆さんと働けるのを楽しみにしてる」という感じに自己紹介する場面でも使われるし、何かのイベントで司会者がI'm so excited to see などといって「私もワクワクしてます」と場を盛り上げる意味でも使われたりするなど、とにかくアメリカ人の挨拶の冒頭にはexcitedがよく使われるようである。

ただ我々日本人からするとどうだろう、このエキサイトという言葉に抱くイメージはこれらとはちょっと違うものではないだろうか。俺の場合はエキサイトという言葉を聞くとなぜかプロ野球珍プレー好プレーの外国人助っ人同士の乱闘シーンが真っ先に思いついてしまうのである。その次に出てくるのはなぜかしらんけど野坂昭如がパーティの壇上で大島渚を殴った場面である。

「激高」

俺のエキサイト観を表現するに一番シックリ来る表現を探したらば、激高だった。そして激高といえば大の大人がカーッとなって我を忘れて殴りかかる、あのプロ野球珍プレー好プレー大賞の乱闘シーンに他ならない。あとは野坂。

だからなのかも知れないが、アメリカ人が、直訳すると「私は今エキサイトしながらここに立っています」とか「皆さんと一緒に働けることにエキサイトしています」みたいな挨拶をしているのを聞くとそのギャップに対し「てめえこらエキサイトしてんじゃねえよ...落ち着けよ...」とひとり妙にウケてしまうのである。

そんな俺であるが人前の挨拶でエキサイトしたことが一度だけある。渡米して日も浅いころ、インターネットで調べた「アメリカの職場での最初の挨拶」に、それを使うようそそのかされたのが最初で最後のエキサイト。エキサイト翻訳とは言ったものである。

「アイム、ソーエキサイテッド。」

あれはまったくエキサイトしていない、極めて冴えない表情であった。どこにエキサイトの要素があったのか甚だ不明だがとにかく「俺はエキサイトしている」と皆さんの前で宣言し、緊張した顔でボソボソと自己紹介をするとウェルカムと拍手を受けてはにかみながら席に着いて以来、二度と俺がこの国でエキサイトすることはない。