人違いでした

オフィスビルの中にあった本社勤務の頃、朝の出勤時に会社のエレベーターに乗り込んだ折、すぐ後から乗り込んできた自分の会社の偉い人に挨拶したつもりが、それが全然違う別の会社のアカの他人で酷く恥ずかしい思いをした事がある。

勘違いするに至った理由、間違えてしまった人と目の前の他人の一番の共通点は他ならぬ「共にハゲていた」であるわけだが、特にその時は背格好、共にメガネであること、なにより頭頂部の毛の具合が大変よく似ていたものだから、割と反射的に、ごまかし様のない大きな声で「こんにちは」と挨拶をしてしまったのだ。

エレベーターの中での人違いは恥ずかしいもので、間違って挨拶した相手は最初は驚いたような顔をしてこちらを(誰だっけ?)という顔で覗き込んできたのだが、すかさず「すいません、間違えました」と言うと、男性は「あ、いいですよ」というにこやかな顔で軽く会釈、、したかと思ったのだが、男性は急に「んんー?」と言った具合に顔をしかめると何かを悟った険しい表情で俺に背を向ける。

不機嫌そうなその背中から聞こえてくる彼の心の声はこうである。

≪こいつ、別のハゲと間違えやがったな!!!≫

おそらくハゲるとこういう事を何度か経験するのかも知れず、気をつけようと肝に銘じた次第である。(頭皮のケアを)