英会話学校でシリアルの発音だけに15分も費やされ憤慨

アメリカ赴任が決まり、アメリカに来る前のわずか2か月間だけマンツーマンの英会話学校に会社のお金で通うことになった。偉そうに言うわけではないが俺の英会話の勉強はそれだけである。その割には頑張っているねとそろそろ誰かに言われないと気が済まないほど今現地では英語をバリバリ使わされている。

して、そのとき通った英会話スクールであるが、45分の授業50コマしかないので仕方ないとはいえ、通いだすと感じたのはビジネス英語の初級がメインで自己紹介や仕事に関する世間話の類が多く、ひたすらに仕事のことばかりなのである。こちらの目下の不安は入国とかホテルのチェックインとかその日の飯のこと、想像の中のアメリカの俺はまだ仕事までたどり着くに至っておらず、大体俺は出張でアメリカに行くわけではないし仕事のことだけ教えられても不安がある、我が社は面倒見が極めて悪く、自分のことは全部自分でやり、現地へ到着したその日からいきなり自力で生活をしなければならないからと、授業50コマ中の25コマが修了した中間レビューの際に英会話学校側にはある程度生活のセットアップを考慮した仕事以外のバリエーションも欲しい旨伝えたりしたものであった。

それを汲んだ形なのか、その翌週担当した先生はアメリカ出身。ファーストフード店でのオーダーの仕方を急にレクチャーしてくれて、日本でいうセットは「ミール」と言いましょうとか、あなたの行くミシガンでは炭酸は「ポップス」といいますよとか割と実用的な知識も交え、ああこれはいいですなあと思いつつ幾つかオーダーの仕方を豆知識の解説とともにトライしていく中でどうもその先生、俺の「シリアル」の発音が引っ掛かったらしくシリアルの発音だけでなんと20回近くやり直しをさせられ、気づくと俺はシリアルの発音だけに全45分の授業の3分の1にあたる15分ほど費やしていた。

シリアル1000本ノックの最中俺は気が狂いそうになった。もうやめてくれんかと、確かに俺のシリアルの発音はその15分で完璧にはなり先生も満足そうにオー、シリアルシリアルとニコニコはしていたがちょっとまってくれよと、俺はシリアルをオーダーしにアメリカに行くわけではないしシリアルの発音だけ完璧にさせられても不安がある、バーガーは言えてるか、スプライトの発音にも不安がある、なぜシリアルだけなんだと。そもそも俺はシリアルなんて生まれてこの方一度も食べたことはないし今後も食べることはないだろうよ、あのような冷えた食べ物では俺の一日は始まらないのであるから…。貴重な50コマの授業、俺の生活、俺の命に関わるこの英会話の時間の中で、二度と俺にシリアルなんて教えてくれるなとその様に思いつつその日の授業を終えたわけである。

それから3年たつがそんなわけで俺のシリアルの発音は今も完璧である。食べたことはないしまだアメリカで披露したこともないが今も俺のシリアルはかなしいかな完璧。せっかく15分かけたシリアル、そろそろ披露もしたくなってきた。何か理由があって俺が突然シリアルについて言及することがあったら全員驚くだろう。それまでカクカクしていた発音が突然シリアルだけ完璧になるのだから。逆に考えてみてほしい、例えばアメリカ人と話していて「ミソシールー?」「シャブシャーブ?」と言っていたのが突然「しめさば。」とハッキリ言われたら驚くだろう。シリアルがしめさばと近い立ち位置かどうかは疑う余地がありますが多分そういうことではないかと思う。

シリアルはどこで食べられますか、私は早くシリアルについてアメリカの皆さんと意見の交換がしたいです。