サンタクロースが居ないと知らされた後のこと

サンタクロースの事を小学5年かそこらの、結構な年齢まで信じていたピュアな子供だったので確か最後は親の方が心配になってヒントをだしたかダイレクトにカミングアウトしたような、そんな感じで急に「いない」ことを知った気がする。4歳下の弟がまだサンタクロースを信じているから言わないようにと釘を刺され、それが人生最後になるのであろうと思われた枕元のプレゼントを開けながら、そこには多少の喪失感があった。

「へえ、まあそうだよな」

先に気づいていた兄にお前もようやく知ったかというような顔をされ、その後は弟のクリスマスを盛り立てる役を与えられることで一気にクリスマスへのアプローチが変わってしまった。とてもあっけない終わりだった。

まだ信じていた頃でも、周りにはそういうことをやらないご家庭の友人もおり、そんな友人の家に遊びに行ったときにはサンタクロースがいると力説すると友人本人ばかりか親からもバカにされたものである。

「お父さんとお母さんが夜中コッソリ置いてるんだよ」

半笑いで、今思うと信じている子供相手にとる態度ではなくロクな大人じゃねえんだけど、そんなはずはないと友達のお父さん相手にムキになって今まで教えられてきたサンタクロースの知識を披露すると、その家がやっていた書道教室の上級生の生徒まで集められ寄ってたかってこの子は真剣にサンタ信じてて面白いねとことごとくバカにされた。

反論は笑われ打ちのめされトボトボと家に帰り母親に言うと一言二言その家の悪口を独り言のように言い、「信じていない家にサンタは来ない」という俺も先ほどあの家で笑われたときに必死に反論として絞り出した文言で説明してくれた。

結論としてはあの家の人たちが正しかった。サンタは親であった。親が近所で買ってきてコッソリ置いていた。騙されていたのかもしれない。

「信じていない家にサンタは来ない…」

確かに信じなくなったら本当に翌年から急に来なくなってしまった。一応何かくれるのかと期待したが翌年から枕元には何もなかった。そうしてサンタクロースはなかったこととして消化し、翌年から何か必要以上にクリスマスに白けた態度をとるようになった俺であったが、それでも今親になり子供の枕元にはサンタさんから来た体でプレゼントを置いている。仕組みは分からないが寝て起きたらプレゼントがある。何年もの間クリスマスの朝が楽しかったのは間違いなかったから。

今年のアメリカはコロナもありクリスマスのプレゼントをオンラインで買う人による12月の物流の大混乱が過去例をみないほどとニュースになった。それも見越してだいぶ前に買ったはずのクリスマスプレゼントの到着予定日は何の嫌がらせか12/26と表示され、そして更に遅れそうな雰囲気が漂っていた。仕事で散々納期の遅延理由をでっちあげてきた俺だがこればかりは説明が出来ない。三密を避けトナカイが1匹にとか、コロナでサンタが…などと夢のない話しか思いつかず、いよいよクリスマスが近づいてきてプレゼントが来ない理由をどういうストーリーで子供に説明しようかと思案していたとき、トラッキングではまだ配送中のはずの荷物がアメリカの郵便局ならではの放り投げるような置き方でクリスマスの前に突然家の玄関前に置かれていた。

こうでも思わないと子供の頃の俺が浮かばれないから思うことにしたが、子供の頃あの家での弾圧にもめげず頑なにサンタクロース信仰を曲げなかった俺へのささやかなご褒美みたいなもんじゃないだろうか。