俺たちの国際試合

息子がサッカーを習い始めて1年以上が経つ。アメリカで盛んなホッケーアリーナを使って行われるインドアサッカーというやつで、人数が6人、交代自由、ボールが外に出ることはなく試合が止まることはないという限りなくホッケーに近いルールである。息子が入っているのは日本人のコーチが指導する日本人だけのチームの小学校低学年カテゴリで、指導者もプロ経験な為練習のタフさもチームのレベルもそれなりに本格的なものである。

始めた当初は息子も全く周囲についていけず親として外野からハラハラしたり歯痒ゆい思いのやり場を誤り、公園で練習に付き合っては喧嘩をし試合の後に余計なことをいってまた喧嘩をし、帰りのスタバで反省会などをしたりと色んな思いで息子のサッカーを見てきたものである。そんな息子もようやく最近コツを掴んできたのかプレイタイムも増え、試合にしっかり参加できるレベルになると年齢別のカテゴリで毎週末に行われる地区のリーグ戦にも出させてもらうようになってきた。最近では息子を連れこの試合を観るのが週末の一つの楽しみになっている。

元々バスケ部だが観戦するスポーツとしてはなぜだかサッカーが一番好きになってしまい、例えそれが全く知らないチーム同士であろうとテレビで放送されていればつい見てしまうし、それがプロであろうとなかろうと関係はなく、極端な例では昔東京に住んでいた時地元のケーブルテレビで放送されていた全く知らない近所の少年サッカーの試合をジッと黙って眺めているのを観て妻にひどくキモがられたほどである。

それほどスポーツとしてのサッカーが好きな上にその試合に息子が出ているとなるとその熱の入り方もひと通りではなく、子を応援する親というより完全な選手、チームのファン、サポーター目線で試合を観ているかのような状態にしばしば陥ってしまう。更にこのサポーターを熱くする要因がもう一つ、毎試合が国際試合であるという点。USA VS Japanが毎試合俺たちの心をアツくするのである。

俺たちは日本各地からここアメリカの地へ、アメリカでたくさん儲けたいという本社のワガママで派遣されてきた駐在員。そしてその息子たちで編成されたジャパニーズ企業戦士二世チームが相手にするのは毎試合体格の半端ない地元のアメリカン・キッズたちである。リーグ戦も他民族国家ならではで、相手にするのも時にはインド人コミュニティの息子たちチームだったり中東系だったり、南米系だったり。それはさながらワールドカップのグループステージ。絶対に負けられない闘いにことごとく連敗してきた者としては目の前で繰り広げられる我が息子の真剣勝負に俺のカタキをヒットしてくれとついついヒートアップしてしまうわけである。

迫りくる体格差にも負けず実直に磨いたテクニックと俊敏さ、チームワークと勤勉さで立ち向かう日本式戦術は遠い異国で頑張る我々駐在員サポーターの胸を打ち、「これが日本人の戦い方だ!」など、勝てば感動し負ければ敵側ベンチで盛り上がるアメリカ人親の大げさなフォーー!の声にいちファンとして、敗戦国として悔しさを感じる日々である。

いずれにせよ日々シコシコと日本企業の実直かつ勤勉なやり方でアメリカ市場で不器用に戦う父親、母親たちはそのような息子、娘たちの雄姿に勇気づけられながら各々の平日に、各々の国際試合に戻っていくのであった。