腰痛ようやく完治

腰痛と闘っていた。治るまで約10日間という今までで一番長い腰痛。いやあ過去最悪の腰痛でしたわと総括しようと思ったところで「お前が過去最高齢で腰痛になっただけなのですが…」という事実に気づき悲しい気持ちになった。お年を召しているので今後の腰痛はこれくらい長きにわたって完治しないか、もっと程度がひどくなるのだろう。嫌すぎる。

腰痛になった直後ネットで腰痛の治し方を調べていたらやたらと「ヘルニアでない限り、安静にするのはもう古い!」的な腰痛最前線のアドバイスが目について驚いたものだが、曰く安静にするより痛み止めなどを飲んででも頑張って動かした方が早く治りやすいと、そういうのである。また安静にしすぎる事で腰痛への恐怖心が高まり、筋力低下だけではないそのメンタルへの悪影響、そしてそれが及ぼす完治スピードのデータなども割とあちこちで言及されており何だか時代が変わったものだ、へえそうですかと感心した次第。

とはいえ動かせば痛いものは痛く、その腰をかばいながら歩くさまを家族から「人類誕生の図の途中の人」と呼ばれたり、別の日には「能楽」次の日には「ロボット」と腰痛を持ちし者が必ず呼ばれる腰痛ニックネームで呼ばれるなどして人が二足歩行を獲得し、文化を得て、技術を高めるまでの歴史を体現したような気持ち。俺はとにかくこのようにして腰痛と闘っていたのである。

腰痛になった直接的な理由は次男が自転車の補助輪を外したいというので土日付き合ったことである。ギックリ腰と言っていいのだろうか。小さい自転車の後ろから中腰で支え何度もその姿勢のまま小走りを繰り返すうちに腰痛アラームが鳴り始めたがそれを無視していると腰に激痛、目がバッテンになりその場にへたり込んだその刹那、次男は「やったー」と言いながら補助輪のない自転車で遥か彼方ガンダーラを目指して旅立っていった。あばよである。歩けなくなった瀕死のジジイの周りを次男が嬉しそうに自転車でぐるぐる回る様はフランダースの犬の最終回のよう。違いがあるとしたらこのジジイは働き盛りで腰以外ピンピンしていることぐらいである。

次男が無事自転車に乗れるようになった瞬間、つまり俺が腰痛になった瞬間を撮影した悲しいハプニング動画を見るといかにも腰痛になりたくてやっているとしか思えない腰に悪そうな中腰のひょうきんな動きをしている小太りのジジイがそれを数回繰り返した後に「アウーー!」と無様に叫びながら膝から崩れ落ちる見るに堪えない光景が映し出されていた。そしてその屍を燃料にするかのようにスイーと彼方へ走り出す次男の笑顔の後ろでマーメイドのような感じで足を折りたたみ満足そうに眺める腰痛で歩けないオッサンの嬉しそうな顔ときたらどうですか。

腰痛との付き合いも10年以上となるがまともに病院で診てもらったことがない。思えば腰痛の他に10代の頃にやってしまった足の捻挫も手首の異常も治さずに今に至っているが今でもしっかりと痛みが残っており時折生活に支障が出るほどである。こういうのってナメてると一生付きまとうので気が向いたときに一つ一つ治していかねばならんなと改めて決意した次第であった。