ヤクルト本社のおもてなし

ヤクルトの社名が「ヤクルト本社」というのはあまり知られていないかもしれない。前職では取引先の一つで時々訪問していたのだが、もう一つあまり知られていないのが商談で訪れた人には商談室にはちょっとしたカウンターがあり、そこにいる女性(ヤクルトレディではなく普通の事務の人であった)からメニュー表を渡され、ヤクルト製品が振舞われるという事実である。(もう10年前なので今もそうなのかは知らない)
取引先と書いたが実際にはあの当時まだ取引口座もない新規開拓先であった。そんなある意味押しかけでやってくる一介の業者に対してもヤクルト本社の社員の方はいやな顔一つせずにヤクルト製品を振舞ってくれた。
メニュー表にあったのは「タフマン」「ミルミル」そして定番の「ヤクルト」。わざわざグラスに注いでくださりこちらが押しかけているのにいつも「いらっしゃいませ」ともてなして頂いた。契約を取り付けようと何度も足しげく通ったが、その度に出てくるヤクルト製品。
 
「毎度押しかけの訪問なので今日はちょっと辞退します」
 
そう言ってもそんなこといわずにとすすめられ申し訳ない気持ちで飲んだタフマン。ここまで沢山飲ませて頂いたのだから絶対に役に立ちたいという気持ちも強まり、通い始めて1年後、ようやく新規で注文を貰ったときは嬉しかった。
飲ませて頂いたから言うわけではないが、ヤクルト本社の社員の方々は本当に皆温和で人当たりのよい人ばかり。こんないい人ばかりの会社がどちらかというとガツガツしているイメージの強い新聞、IT、鉄道会社の中に分け入ってプロ野球の球団を長年保有し続けているという事実に改めて驚き、スワローズ以外は全て悪玉菌、正義は、善玉はスワローズ以外に無しという気持ちにもなり、感謝の気持ちを込めて神宮球場へスワローズを応援しに行ったこともあった。
 

hyenasclubs.org

 
時にはこのようなご恩を忘れ、ヤクルトにインスパイアされた製品をレビューしたこともあったが、それでもヤクルトに営業に行ったことのあるものは、あのおもてなしを受けたことがあるものは!多少高くてもスーパーでヤクルトを見るとそれを選ばずにはおられないはずだ。
最後になるが、実は俺が通っていたのは国立市にあるヤクルト本社の研究所。新橋にあるヤクルト本社の本社には行ったことがない。そこに行ったことのある人に昔聞いた話では、ヤクルト本社・本社(ややこしいが)の商談コーナーにはそこだけで飲める「タフマン」と「ミルミル」をミックスした「タフミル」というヤクルト公式のオリジナル・ミックス・メニューが選べるらしいのだ。これが本当かどうか、今となっては調べる術もない。皆様の中で興味のある方がいたら調べてみてほしい。

俺も早くVRでエロ動画が観たい

VRがとても良いらしい。VRがあればもう何もいらないという。だから俺もVRでエロ動画が観たい。早く観たい。VRのエロ動画と交際したい。

犬に自分のションベンを積んだセスナが世界中に自分のションベンをばら撒いて行く動画を観せたら満足して今後一切の散歩を辞めるんじゃなかろうか。

とろとろに煮込んだ牛肉が口の中で溶けることをやたらと喜ぶ人の前に空っぽの皿を持ってきて、運んでるあいだに溶けて無くなりました〜と言うとギンギンに勃起してギョエエェ美味しい〜!と喜ぶんじゃなかろうか。

それと同じことがVRにもあるのだとしたら、俺も早くVRでエロ動画が観たい。

最後の3分間スピーチ

前に働いていた会社には週の初めに3分間スピーチってやつがあって、自分のプライベートの話、ニュースについての感想など、何でもいいからとにかく前に出て3分間程度スピーチしなければならなかった。

対象は営業職のみで、順番に回していったとしても大体一ヶ月半ぐらいに一度のペースで自分の番がやってくる。「話を整理し、人前できちんと喋る訓練」とかそういう理由で始まったらしいのだが、ただこれ、やるのはいいのだが週初めの朝一で眠い中に誰も人の話を聞くものなどおらず、一般社員はもとより本来ならばこういうのはしっかりやるべきやんごとなき支店の長に至るまで皆一様に目が虚ろで伏し目がち、はっきり言って誰も前に立っている者の話など聞いていなかったのが実情なのである。ならばやめてしまえば良いのにと誰もが思っているはずなのだが誰も言い出さない。組織の悪しき部分である。

それを良い事に、俺はこのシステムが始まって半年ほど経った辺りから三回連続で「自転車を買おうとしているが高いので迷っている」という話をしたがやはり誰も気付かなかった。つまり無駄。そういうことなのである。

その一ヵ月半後にしたって、さすがにヤバいかなと思いつつも禁断の四回目にあたる「実は自転車を買おうとしているが高いので迷っている」という話を決行。スピーチを終え「バレちゃったかな...」とドキドキしていると、支店長が一ヶ月半前にこの話をしたときと同じ「幾らぐらいのを買おうとしてるの?」という質問をしてきたので、前回は「5万です。」と言ったがその時は「8万です。」と答えたが一ヵ月半前と同じく「へえ」という反応で事なきを得たものであった。

 

これはそんな3分間スピーチ最後の日の物語。前職の退職が決まり、最終出勤日となった朝のことである。そのときまでにすでに送別会や個別のご挨拶などを済ませていたが、最終日が奇しくも3分間スピーチのある月曜日。

「多分、最後の出勤ってことで朝礼で挨拶させられると思うから」

前日、先輩からそんな事を言われていたが俺もそのつもりであったし、所属部署の最後のお勤めとしてこの場でピシャリとご挨拶をさせていただく心づもりで事前に皆々様への感謝の言葉はバッチリと用意していた。

当日朝、厳粛な面持ちで出勤し、すでに片づけの大半が終わり何もなくなったデスク上で手持ち無沙汰にしていると8:30。朝礼の時間である。全員起立し、朝礼当番が立つお決まりの事務所中央に体を向けるいつもの状態で、恐らく今日は当番に関係なく、今日で最後となる俺が「お別れの挨拶を」と指名されるのだろうと考える皆の視線がうっすらと俺に向けられるのを感じる。望むところである。

ほどなくすると、奥のほうから支店長が現れ、事務所中央にゆっくり歩いてくる。
チラリと俺を一べつし、そして一言。

「今日は僕の当番なんで、ちょっと話を」

俺の最終出勤日の朝礼当番は支店長だった。新しい職場で挑戦したいという俺からの退職の意向を最初に聞き、そして最後に許可を出してくれた人だ。あとはワンサウンザンドウォーズを闘った相手でもある。

bokunonoumiso.hatenablog.com

退職に向けては色々と話をした支店長。こうした場を用いて俺に向けて別れの言葉をくれるつもりなのだろうか。だとするとヤバい、こうしたお膳立てというものは結構胸を打つものがある。あらかじめ考えてきた言葉はあったが、支店長からのメッセージを聞いたのち、それに素直な感謝の気持ちを伝えようと思った。飾らない、そのままの気持ちをである。「では」と始めた支店長の話は意外なものだった。

 

「日本に水族館は一体どれくらいあるとおもいますか?」

 

「○○くん、分かる?」「××くんは?」と、立ったままの社員数人に質問し、俺も同じように当てられたがやはり同じように「分かりません」と答えた。

俺の最後の出勤日になぜか水族館の数を問う。一体何の話なのだろう、とみんな聞き耳を立てている。だがこれはまさに営業トークの基本、まず最初に目的の分からない質問や、派手なキャッチコピーなどを投げかけ、注意を引くことで本題への入り口をスムーズにするのである。話に引き込まれる俺に「最後のレッスンだ」とばかりになおも水族館の話を続ける支店長。

「日本は人口当たりの水族館の数が世界一」
「日本には素晴らしい水族館がたくさんある」
「水族館に行くと色んな発見がある」

俺たちは魚、場所は違えど広い大海原で繋がる仲間だ――まさか俺の旅立ちを海ないしは何らかの海洋生物に例えようとしているのだろうか。3分間スピーチがどう締められるのか色々と勘を働かしてみるが何も思い浮かばない。その後も色々と日本の海または水族館の話題にふれた後、丁度3分ほど経とうとしたあたりで、最後に支店長はこう締めくくった。

「そんなわけで、楽しいのでみなさんも近くに水族館があれば是非行ってみてください」

「・・・・・・」

「以上。」

部下の最後の出勤日だというのになぜ彼は、その挨拶の時間も割かずに「水族館は楽しいよ。」という話をせねばならなかったのか、色々と考えをめぐらせては見るものの答えが出る気配は無い。もうあんな会社無かったことにして、新しい職場で頑張るしか手立ては無いと思った。

皆さん、ヘルメットに騙されてますよ!

雪の中、ヘルメットを被って危険な場所で仕事をしていた時のことである。

一応ホワイトカラーのはずだが、まさかホワイトって雪の事だとは思わなかった、など余計なことを考えながらの作業が祟り、頭上にある配管とか出っ張りなんかで何度かガツン、ゴツンと頭を打つ。

ヘルメットを被っているから良かったものの、それでも「ベコッ!」という激しい衝撃は頭に伝わり「うおっ」と声が漏れる。これぞ激務。危険度Aの尊い作業だよ。生きてるって感じがするわ。しかし暫くして本来なら激しい衝撃を受け、「ああ、ヘルメット被ってて良かった ありがとうヘルメットさん...」とヘルメットさんに感謝するべきところで「いや待てよ」と、よく考えてみた。

頭を打ったのは実は守ってくれたはずのヘルメットを被っていたことが原因であったのでは。つまり、通常の頭のサイズよりヘルメットによって一回り以上大きくなっているせいで障害物を頭で感じる距離感が微妙にズれ、普段なら当るはずの無いものに無駄に当りまくっているだけの事だと。

そうだよなそうだよな、一応頭上には気をつけているわけだし障害物の位置は大体意識出来ているはず。であればそもそもはちょっとやそっとではこう何回も当たるはずが無いものなのだ。実際の所、頭を打って「うおッ」っと驚くのは打った衝撃よりも本来であれば避けているはずなのに不意に頭を打ったことではないか。いやあ危ない危ない、これは完全に騙されるところでしたわ。ヘルメットさんじゃねえわ、このメットの野郎ときたら、守り神を装ったとんだ疫病神やで!

このようにヘル・メットはというと、定期的に「アンタを守っちゃりましたよ」というわかり易い実績を出し続けることにより「いやあ、ヘルメットがあってよかったぜ」「いやあ、ヘルメットがあってよかったワ」「いやあ、ヘルメットがあってよかったでゲス」(今更ですが語尾が違うだけなので今の台詞三つは読み飛ばして結構です)などと利用者からの評価を高め、日本の作業シーンに末永く「無くてはならない存在」として居座り続ける。それがヘルメットのやり方。姑息さ、姑息さぁよ!

だがそんな姑息なやり方も今日で終わりや、PV数12無量大数/日のこのブログが貴様のやり口をこうして告発した以上はその作戦ももう終わりや。せいぜいメット仲間とメットカフェで徒党を組んで俺にF5攻撃でもしてろってなもんである(笑)

作業者の皆さん、あなたが今日守られたその頭、ヘルメットの野郎が仕掛けた自作自演ではありませんか?!エッ!違う??なにぃ、へえ、そうでしたか...。

 

店長を呼んだことはあるか

「店長を呼べィ!」

先日アメリカのマクドナルドで怒り狂った客がレジにやってきてレシートを片手に「値段がおかしい」というような内容のクレームで騒いでいた。

さすがアメリカというべきなのか、そんな客の対応に慣れているのかハナから真面目に取り合うつもりもないのか、呼ばれた店長は表情一つ変えずに淡々と質問にだけ答えていく。次第に怒っている側のほうが恥ずかしくなって来たのか怒れる客も何かのスラングと思しき捨て台詞を残して去っていく。店員は動揺一つ見せず何事もなかったように接客を始め、客も苦笑いするだけでまた通常の店内が戻ってくる。

空港でも見たが、ここアメリカでも何か問題があると割と店長や上司呼べと叫ぶのだ。上の人間を呼んでお前らを叱り付けさせるというよりも、責任のない人間に何を訴えても無表情で「ああ、はいはい、そうですか」とスルーされるだけだからかもしれない。

 

皆さんは自ら店長を呼んだことがあるだろうか。俺はまだ一度もない。昔松屋の「うまとまハンバーグ定食」を初めて食べたときに美味すぎて店長を呼ぼうとしたことはあったものの、基本的には俺は小心者なので店長を呼ぶことは一生ないだろう。何かあっても我慢するし、注目を浴びたくないものである。

しかし望みもしない理由でかつて「店長が来た」ことはあった。店長が俺に謝りに来たのである。異物混入で。

 

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この写真は今から5年前だろうか。都内のとあるファミリーレストランでホットケーキを頼んだときに中から出てきた異物の写真である。滅多にファミレスに入ることも無く、また殆どホットケーキを食べたことの無い俺であったが、あの日は同じ月に控えていたオモコロのイベントに出るライターの宇内くんの為に、同サイトのライターの盛岡さんと一緒に早朝から集まりネタを考えていたのではなかったと記憶している。朝から頭を使うとあって、朝のコーヒーのお供に何となくホットケーキでも食べたくなったのが発端である。

異物の存在に気がついたのは口の中。「ガッ」という歯ごたえに最初は焼き加減がキツめのところが硬くなっているのかと思ったがそんなわけがあるはずもなく、口から離し目の前で見て「異物だーー!」とビックリ。

あの頃は丁度、何故かしらないけれども世間を異物混入事件が騒がせていた頃だった。色んな外食チェーン、食品会社の製品の中に異物が見つかり、杜撰な管理体制や後処理が責め立てられていた頃だったのだ。そして度重なる異物混騒ぎに疲れた人々のストレスなのか、例外的ではあるが、ときに発見者側がバッシングを受けるケースも出てきたものである。

そんなタイミングでもあったものだから俺は見つけてしまった側なのに企業の炎上事件の起点になっちゃうのでは、この問題を変に扱うと俺も何かに巻き込まれるのではと妙にドキドキしたものである。

宇内くんと盛岡さんは「おおおお、店長呼べ!店長!」「店ッ長!てっんっちょう!」と未曾有の店長呼び出しチャンスだと嬉しそうに騒ぎだしオドオドする俺を急き立てる。その目は俺には「出方次第ではワシらのメシもタダにして貰おう!」というスケベ心が透けて見えたものである。

目の前に現れた異物に「い、い、い、異物...」と緊張する俺の横を丁度よくタイミングよく近くを通った店員を呼ぶその手の挙げ方も不自然極まるもので、何も知らずにこやかに近づいてきた店員に内緒話のような小さな声で曰く、

(ホットケーキに、コレが入ってました...)

とささやいて伝える次第。キャア!と軽く悲鳴をあげた女性店員が果たしてマジの反応か演技だったかは知る由もないが、それから5分後、奥からコックのような服装をした店長がホールの女性と一緒に現れ申し訳なさそうな顔で深々と頭を下げて開口一番お詫びの言葉。

なんでも泡だて器の部品が落下しそのままホットケーキになってしまったのだそうだ。その場で原因と対策を丁寧に説明する店長の顔には「どうかっ!どうか穏便にたのんます...(チラッチラッ」というメッセージが読み取れたが、一方の俺はというと、そんなことよりも周りの客が何事かとチラチラ見るのが気になって「大丈夫です、問題ないです」と早々に切り上げようとし、「ホットケーキは作り直してきますから」という当然の申し出に「ありがとうございます!」などと感謝する始末である。

「タダにできたんじゃないの」

などと言う宇内くんの台詞、俺も第三者だったら言っていたかもしれない。店長を実際に目の当たりにすると結構緊張するものである。今回はつい来ちゃったが自分では絶対に呼ぶまいと決意を新たにした次第であった。