「口説く」の具体的な行動内容について、いまだ誰からも一切説明がない

タイトルのとおりである。「口説く」という言葉を使う人も高齢化が進み今ではもう古い臭いしかしない気もするが、それでも今なおこの単語の意味が通じる以上は世間に流通する言葉と認識している。

俺は「口説く」という単語自体はあと10年近くすると消えてしまう言葉なのではないかと予測しているが、特に強い根拠はないものの昨今の男女関係のあり方には次第にそぐわない言葉ではないかと思うからである。

などとさも口説きについてわかった風を装っているがその実雰囲気でしか口説き行為のことを理解していない。そもそもであるが俺は「口説く」という行為が一体何を指すのか、コレというものをはっきりと捉えていないのだから。

「口説く」という言葉を聞いたときにまず思い浮かべるのがバーカウンターである。もうすぐ36歳になるというのにバーどころか餃子の王将のカウンター席にすら緊張して殆ど行ったことはなく、したがって俺のバーカウンター観は90%が少年漫画で仕入れた知識であるのだが、とりあえず口説き行為が行われるのはバーカウンターである。しかもなんかよく分からないけど真っ赤なドレスを着た女性がいて、その側からタキシードをまとった男が「ねえ、いいじゃん」と近づいている様がどうしても思い浮かぶ。なにが「いい」のかは少年漫画には一切書いていないのでよく分からないのだが、これが俺の想像する「口説き」概要である。

こうしたトラディショナルな口説きシーンしか知らないものだから、果たしてこれ以外に口説き行為の一連で何がなされるかまでは皆目検討が付かないのである。一応マセてはいるので口説き行為の最後には「SEX」という終着駅があることだけは分かっているものの人生経験がセミ並みの男ですから、口説きからSEXまでの乗換え方法が全く分からずいつも最後は京急三崎口駅である。もしくはどうだろう、俺が知ってる口説きボキャブラリーを駆使して、バーカウンターでドレスの女に「ねえ、いいじゃん」を100回ぐらい連呼していれば、人が徳を積むように花粉が溢れて花粉症が発症するかのようにいつか「いいわよ」となる、またはそれが口説きなのではと思ってしまいそうにもなるってもんである。

 

「口説かれた」という女性の声も気になる。具体的な口説き行為の認定方法も曖昧な中でどうやって女性が「口説き」と認定するのか、これも極めて難しいテーマである。飲みに誘っただけでそうと認識する人もいるかもしれない。そういえば俺も昔飲みに誘うときに「ねえ、いいじゃん」と言ってしまった事がある。何が「いい」のかは分からないなりに、俺もあの時先方からしたら「ヤダ、口説かれてるッ..」と思ったかもしれないが残念ながらそのとき執拗に飲みに誘ったのは前田くんという地元の友達だったのでもし思われていたらとっても大変である。

「おい、あの女を口説いてこいよ」

みたいな台詞を映画で見たことがあるが、俺が仮にそんなことを命ぜられた日には口説き方も分からず「しよッ!ねェ、しよッ!」とストレートにいってしまいそうであるし早急にこの口説きとは何かを解説してほしいものである。