街で見かける謎の叙々苑キッズ

東京に住んでいたとき実に3回も「叙々苑に行きたい」と言ってる小太りのガキを目撃している。

初めて遭遇したのは上京してすぐの頃、俺は学生で、場所は小田急線の電車の中だった。親と手をつないで電車に乗っていた兄妹の兄の口から唐突に発せられた「叙々苑いきてー!」というプライマルスクリーム。

当時叙々苑など知らなかった俺だったが、同郷の友人にiモードで調べて貰うと返ってきたのは「高い焼肉店だ!」という答え。
「焼肉」ではなく謎のチェーン「叙々苑」をピンポイント指定する少年。それが叙々苑との、叙々苑キッドとの初遭遇の瞬間である。

そのさらに数年後、社会人になっていた俺の目の前に現れた別の叙々苑キッドは、駅ホームの人ごみの中にいた。

そのJキッドは非常に程よく小太りであり、いかにも叙々苑が食いたくてたまらないといった下品なタレ目で(焼肉だけに)母親に「叙々苑いきたいよ~!」と叫んでその時間に誰一人焼肉のことなんて考えてもいなかった善良な市民の注目を集めていた。

顔こそ覚えていないが、年齢その他から、間違いなく最初に会った叙々苑キッドとは別人であると言い切れる。異なる場所、異なる時代に現れる二人の叙々苑キッド。焼肉なんて色々あるはずなのに、小デブの少年たちのハートを捉えて離さない叙々苑って一体・・・・


そして三人目、最初の叙々苑キッドから10年後だった。新宿を歩いていたら前から歩いてきた小太りの少年がすれ違いざま、母親に「ねえねえねえ、叙々苑弁当食いたいよ~」などと明らかに叙々苑弁当を食いたそうな顔で豚々しく懇願していた場面がそれである。「ねえねえねえ」と書いたが実際には100回ぐらい言っていたように思われる。

そのときにわかったのはひとつ。

叙々苑は弁当もやっている・・》

叙々苑キッドから学ぶことは多い。

最初に出会ってから実に10年以上。ここでもまた、「焼肉」ではなく、「叙々苑」と言ってのけるキッドに対し、俺は未だ叙々苑に一度も行ったことがなく、それどころかかねてから「肉の美味しさを決めるのはタレ」などと妻に言って聞かせては、高い焼肉屋へ行く気配を微塵もみせない姿勢を続けている。

サラダが実質ドレッシングを食べる媒体であるように、肉もまた、タレの仲介者に他ならないのだ!!そう言い聞かせては叙々苑に背を向け続ける日々・・・!

そのような訳で、きちんと調べもせずに叙々苑が高いというイメージだけでここまで生きてきて、35現在いまだ近づいたことすらない現状。謎の叙々苑キッズにも3人も会ったことだしそろそろ行った方がいいかしらなんてことを考えている次第であるが、叙々苑がそんなに美味いのか教えて欲しいのと、あと、皆もこの叙々苑キッドに遭遇したことがあれば是非報告してもらいたい。

で、改めて言うが、肉の美味しさを決めるのはタレである。