お年を召されておりますので

アメリカに行くことになる少し前、仕事がうまくいかず上司とも合わず、転勤でやってきた当時住んでた街にも馴染めず、身の回りのもの全てにうんざりするという30代のサラリーマンにはある種のあるあるともいえる現象により、当時転職によって入社して5年目の会社から更に転職をしようと斡旋業者、いわゆる転職エージェントに登録をしたことがあった。

既に2回の転職経験があり転職に対して殆ど抵抗がないばかりか、それまで転職をするたびに人生が好転してきたと思っていたので今回もかなりの期待を寄せて申し込みをしたのだが、過去2回の転職を経験した東京圏と違いその当時地方に居たこともあってか妙に求人内容が物足りなかったものだから、紹介してきた転職サービス会社の担当女性のアラキさんに「なんか、こう、、もうちょっと良いのはないんでしょうね!(チラッチラッ」などやんわりと紹介される求人内容がよくないぞ、クソだぞの意を伝えると、それに返して曰く

「お年を召されておりますので…」

言いやがったな、である。他人の年齢を推測するのは良くはないが、アラキさんとて多分俺と同い年か何ならちょっと上であったと思う。その当時34、5歳ぐらいだった自分がまさか同世代の人にお年を召すなど言われるとは思っておらず、その新鮮な言葉の響きが当初はめちゃくちゃツボに入り気に入って色んな所でネタにしていたがそのうち段々と確かに自分がお年を召している気がしてきたのと、根が被害妄想で出来ているため彼女のお言葉を反芻するにつれ

≪クソぁ求人ではなくぉめぇなんだょ≫

つまりそんな風に言われているようい思えてきてその後の転職に対するテンションときたらもはや地の底、お年を召しているくせにノリノリで若かった頃と同じノリで転職シーンに参入などしようとした自分が恥ずかしいやらなにやらでアラキさんにはその後お年を召したことを理由に以後連絡するのをやめ転職活動がその瞬間に完全終了してしまった。

そしてその数か月後に転職をしようとしていた会社から突然アメリカ行きを伝えられ今に至ることを想うと、何気ない一言が他人の人生を変えちゃうんだなって、、あれからナチュラルに時が経ちガチでめちゃお年を召した今の俺をアラキさんにまた見て貰いたい。どうですか、アラキさんも召してますか。