コロナにより全世界の男性の髪型がガタガタになる中、俺は

男性はどうしても月に一回、少なくとも二か月に一回は髪を切らないといけない。髪の生え方、男性によしとされる髪型や社会的なルールによるものである。あまりクローズアップされていない気がするがコロナで男性を直撃したのは髪を切りに行けないという深刻な問題。アメリカにおいてもコロナでの外出自粛や理容店の休業などもあり3月以降、普段は短髪が多く常に短く整えている人も多いアメリカ人でも段々と髪が伸びていく人は増え、3か月も過ぎたころには奥さんに切ってもらったりセルフカットに挑むもの、坊主にするものなどが増えてきて、若干ガタガタの髪をした人が周囲には一時的に増えたものの、6月からは理容店が営業再開、現在は普段のアメリカ人の頭髪が戻ってきたというのが今の状況である。

セルフカットや妻カットが拙かろうと、アメリカ人はまだいいのである。黒人男性は元からセルフカットが多く何ら問題はなさそう、白人男性とて彼らの髪は柔らかく、また肌の色とのコントラストが小さく若干バランスが悪かろうと何となく頭上に馴染み、ガタガタなりに数日もすれば整ってしまう。問題は我々アジア人である。アジア人の髪は硬く黒く、肌の色と明暗クッキリ、きちんと切らないと失敗があからさまに頭髪に出てしまう悲しい人々なのであるから。コロナ以降、初めての妻カット、セルフカットに挑戦し失敗した日本人を何人か見てきた。これは仕方がないことで、日本人男性の髪は難しい。プロであるアメリカの理容店でもアジア人の髪は上手く切れない人ばかりである。地元のアメリカ人理容店に挑戦し無残に頭髪だけマイクラになって帰還してきた人を俺も見てきたものである。

我が社にも日本人が何人かおり、彼らが5月ごろになり耐えきれず初の妻カットに挑戦し突然失敗田植えアートのようになってきたのを見た。それぞれ頭がこうなった経緯を必死に、恥ずかしそうに説明していたが、そこで聞いていた全員が頭がガタガタだったので、うんうんと我が事のように皆厳粛な面持ちで頷き、この辛い時期を頑張って乗り越えよう、コロナ許すまじと、まるでコロナは頭髪がガタガタになる病気であるかのような低いトーンで改めてこの恐ろしいウイルスとの闘いに頭ガタガタのまま燃えていたアツい光景であった。

俺はというと2年前に日本人の髪に慣れているはずのアジア人経営の理容院でまさかの、裏切りの角刈りにされて以降、当時は口ひげを生やしていたこともありフレディマーキュリーさんなどと親族にバカにされたこともあり心に深い傷を負うなどしてその後はもともと子供の髪を切っていた妻に俺も頼むと頭髪を委ね今に至る次第。妻カットでいうと大ベテランである。

3人の男子を切り続けた妻の腕前は素晴らしく今ではお任せで切って頂くほどなのだが、弱点としては完全に息子2名と全く同じ坊ちゃん刈りなので割と奥様方が集う場に俺が行くと「あら、お子さんと髪型が同じなんですね、かわいい」などと結構その場にいられないご指摘を受けるなどしたり、同じ髪型の息子にまで「お父さんの髪型ウナギみたい」とめちゃくちゃ聞いたことのないカッケェ表現でディスを受けては「お父さんがウナギならお前はウナギの稚魚のレプトケファルスだね」などとアカデミックに返しつつも俺の心の中ではかつて中学生の頃にビートルズみたいにしてくださいと近所の床屋に頼んだら髪が亀頭みたいになり「タートルズやないか~い」とセルフツッコミをしながら自転車で菜の花畑をHelp!と泣きながら帰宅した苦い記憶などがよみがえると徐々に俺の背後にWe will rock youが流れるのを感じながらも、それでも、それでも、、髪がガタガタよりは遥かにマシだと、マーキュリー・オブ・フレディよりはレノン・マッカートニーの亜種の方がイイと拳を握りしめ、この辛い時期を頑張って乗り越えよう、コロナ許すまじと、まるでコロナは頭髪が亀頭になる病気であるかのような低いトーンで改めてこの恐ろしいウイルスとの闘いに燃えている次第である。